日立金属が1月、社名をプロテリアルに変更し、米アルミ大手出身のショーン・スタック新社長の下で再出発した。この10年、相次ぐM&A(合併・買収)で製品群は広がったが、ポートフォリオマネジメント巧者とはいえず低収益にあえぐ。寄り合い所帯がタコツボ化したゆえに輝きを失った名門を復活に導くことが、新社長の使命になる。
合金製造に使う日本最大級の真空溶解炉を擁するプロテリアルの安来工場(島根県安来市)。スタック社長は就任前、製造現場を訪れ「あらためて技術力の高さを目の当たりにし、大きな成長の可能性を感じた」という。
同工場は旗艦拠点で、世界シェア首位の自動車用CVT(無段変速機)ベルト材や航空機エンジン用のニッケル合金などの合金を手掛けている。金属の材料設計や不純物を取り除くノウハウなど競争力の高さは折り紙付きだが、高い技術力の半面、低成長、低収益の事業を抱えて青息吐息になっているのもプロテリアルのリアルな姿だ。

M&A拡大も生かし切れず
旧日立金属は2022年、米ベインキャピタルや日本産業パートナーズなどの日米ファンド連合によるTOB(株式公開買い付け)後、12月に上場廃止となった。親会社だった日立製作所は日立金属株を放出。かつて日立化成、日立電線と並び「日立御三家」の一角を占めたが、名門の看板を下ろしファンドのもとで経営再建を進める道を選んだ。
社長に迎え入れられたスタック社長は、欧州の銀行大手を経て米アルミ大手アレリスの最高経営責任者(CEO)を5年間務めた。同じ素材業界に籍を置いていただけあって非鉄金属にはめっぽう強く、プロテリアルに対する問題意識は明快だ。
「企業文化が統一されていない。工場間だけでなく、工場内でも品質管理やメンテナンスなどが異なっている。操業システムの標準化を進め、タイや米国など海外を含めどこの工場にいっても同じ形式でものづくりができるようにする」と話す。
旧日立金属はここ10年、M&Aによって資産を増やしてきた。13年に日立電線と合併したほか、14年には北米の自動車用鋳物最大手のワウパカ・ファウンドリーを買収。航空機エンジンなど向け材料を手掛ける三菱マテリアル傘下のMMCスーパーアロイも子会社化した。
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