2022年の日本経済にとって、外国為替市場で一時1ドル=151円台まで進んだ円安は間違いなく大事件だった。年間の値幅は38円にもなり、年末にかけて130円近くまで戻るという「乱高下」だ。一体何が起きていたのか。みずほ銀行で外為市場の分析を手掛ける唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストに聞いた。

まず改めて、2022年に大きく円安が進んだ理由をどう見ていますか。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト(以下、唐鎌氏):まず、「ドル高が進んだから」という理解は正確ではありません。円安は22年の前半には始まっていたわけですが、当初はグローバルで見ればドル安の場面もありました。それでも円安が進んでいたということは、日本固有の「日本売り」的な要因があったということです。それは貿易黒字の消失と対外直接投資の急増という構造的な変化です。
貿易について言えば、日本の輸入は4分の1を鉱物性燃料が占め、他の多くの資源も輸入に頼ります。これらの価格が22年に急騰したことで、巨額の貿易赤字になりそうです。厳密には原油価格がウクライナ戦争前の水準に戻っていますが、新型コロナウイルス禍前には戻っていません。しかも、最近顕在化した、脱炭素や脱ロシア依存、脱中国依存といった資源価格の上昇要因は、短期的に解消できなそうです。
対外直接投資は何かというと、日本企業がM&A(合併・買収)で海外企業を買収したり、海外工場を展開したりすることです。日本企業がグローバルで最適な事業体制を整える中で進んできました。

いずれも、為替市場の観点では、大きな円売り要因です。投機筋の円売りは反対売買を伴いますが、輸入代金の支払いは円の売りきりですし、海外工場は円安が進んだからといってすぐに売却はできません。海外拠点で稼いだ分は、連結決算上は収益になりますが、国内に環流せず、そのまま海外で再投資に回ることが多いでしょう。日本の対外経済部門の在り方が変わってしまったのです。
足元では22年12月20日に日銀が金融政策で長期金利の変動容認幅を広げました。
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