(写真:共同通信)
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 孫正義社長率いるソフトバンクグループ(SBG)の「冬ごもり」が長期化しそうだ。11月11日に発表した2022年4~9月期決算は4~6月期に比べ最終損益の赤字が大幅に縮小したが、その主因は保有する中国・アリババ集団株の一部売却に由来する一時的なもの。本質は、「当面の間は最後になる」と、孫正義社長が今後の決算説明会での登壇を取りやめることを明かしたことにある。異例の「冬ごもり宣言」の背景にあるのは何なのか。

 孫社長は毎日世界の金融市場の分析についての報告を、社内の専門チームから受け取る。株価や金利、為替相場といった表面的なデータだけでなく、様々な立場の金融関係者から聞こえてくる定性的な情報を含めたものだ。その内容は明かされないが、手掛かりはある。

 後藤芳光CFO(最高財務責任者)が11日の説明で発した「保守的にみれば、不安定な状況が続くとみるべきだ」との言葉だ。楽観シナリオではなく、保守的・悲観的なシナリオに沿っているといえる。その1つの結論が、投資会社として厳しい事業環境の「長期化」だろう。

 マーケットの歴史を振り返れば、これまでもいくつもの大きなショック、調整局面があった。市場のプロの間で最近取り沙汰される悲観シナリオは、「次のショックはリーマンショック型ではなくITバブル崩壊型」(国内証券エコノミスト)というものだ。

 当時の時間軸はこうだ。リーマンショックは2008年9月に米投資銀行大手のリーマン・ブラザーズが破綻した後、急激な信用収縮で世界経済が混乱し、半年ほどで日経平均株価は底値を付けた(09年3月)。07年7月の高値から数えてもおよそ1年半後だ。

 これに対し、ITバブル崩壊時は、00年3月の高値から、底打ちするのは約3年後の03年4月。ナスダック総合指数で見ても2年半かかった。この間、ずるずると下値を切り下げ続けた。厄介なのは、底打ちしたかどうかはその時点その時点では判断できないことだ。振り返ってチャートの谷底を確認するのは簡単だが、現実には株価が上向いても「いずれ反落があるのではないか」と慎重にならざるを得ない。

 加えて、SBGが傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じて手掛けるユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)投資特有の事情もある。投資成果を測るための株価評価は、上場株のようにリアルタイムでは更新されない。SBGの自主査定のほか、ユニコーン企業がベンチャーキャピタル(VC)などから追加で資金調達をするタイミングを通じて、徐々に更新・反映される。上場テック企業の株価下落傾向が続く中、今後しばらくは、どちらかといえば評価減が時間差で現れてくる可能性が高い。