米国や欧州、日本などで株価が相次ぎ最高値を更新している。新型コロナウイルスの感染再拡大や新たな変異型の登場、アフガニスタン情勢の混迷、日本の首相退陣表明といった「事件」が相次いだにもかかわらずだ。9月7日には日経平均株価が一時、5カ月ぶりに3万円の節目まで回復した。ポジティブとは言えないイベントをいいとこ取りで解釈する市場の姿は、行き場を失ったマネーが消去法的に株に向かう様子を映す。

米株式市場の勢いは止まらない(写真:ロイター/アフロ)
米株式市場の勢いは止まらない(写真:ロイター/アフロ)

 象徴的だったのが9月3日のニューヨーク市場の値動きだ。取引時間前に公表された米雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比23万5000人増で、事前の市場予想の72万人を大きく下回った。景気敏感株の多いダウ工業株30種平均は下落して始まったが、その後は持ち直し下げ幅を縮小。ハイテク株が中心のナスダック総合株価指数に至っては、過去最高値を更新した。

利上げが遠のくとの期待感

 経済回復の鈍化は企業業績の足かせとなるが、緩和的な金融環境を維持せざるを得なくなるとの期待につながる。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が8月27日の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で「年内実施が適当」と示した、テーパリング(量的緩和政策の縮小)が後ずれする、との思惑が生まれたわけだ。

 そうなれば政策金利の引き上げはさらに遠のく。金利上昇の影響を受けやすいナスダックやSOX指数の上昇に弾みがついたことは、こうした発想で買いに回った投資家心理を反映している。雇用統計の一部として公表される平均時給が予想を上回ったことで賃金上昇圧力やインフレ懸念を織り込んだ10年物国債利回りの上昇も、本格的な上昇にはならないと「見切られた」。

 テーパリングは市場に追加投入される資金を減らすだけで、資金を吸収するわけではない。市場が警戒すべき政策の正常化は「利上げ」で、その時期は見通せない。「景気を壊すような正常化はしないだろう」(日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジスト)というのが市場のコンセンサスといえる。

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