円の対ドル相場が約20年ぶりの安値圏にある。みずほ銀行でチーフマーケット・エコノミストを務める唐鎌大輔氏は、長期的な円高トレンドが、円安トレンドに転換した可能性があると分析。目先の為替変動への対応だけでなく、日本経済が構造改革を迫られていると指摘する。

約20年ぶりの円安水準が訪れています。直近ではロシアルーブルやトルコリラと比べても弱い。どうしてここまで売られているのでしょうか。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト(以下、唐鎌氏):足元で円安が進んだ理由は3つ。2つの国内要因と1つの海外要因です。
国内要因の1つ目は巨額の貿易赤字という需給。資源価格が上昇するなかで貿易赤字が膨らむということは、外為市場では支払いのために円を売ってドルを中心とした外貨を買う取引が増えます。
2つ目は日銀が大規模金融緩和を継続していることで、低金利通貨は売られやすい。3つ目の海外要因は、米国でFRB(連邦準備理事会)が利上げを進めていることで、円に比べ高金利通貨となるドルが買われやすいということです。

より大きな要因が、マクロでみた日本経済の地盤沈下です。これまで円が「安全資産」と呼ばれ、円買いの一因とされてきたのは多額の経常黒字を稼ぎ、世界最大の対外純資産国という地位を保持していたからです。これが、所得収支で稼ぐ以上に(資源価格上昇で)貿易収支の赤字が拡大し、いわゆる「債権取り崩し国」になる可能性があります。
例えば、企業活動のグローバル化が不可逆的に進むなか、海外工場建設など対外直接投資も拡大してきましたが、こうした投資は成果が上がっても海外で再投資に向かいやすいため、円売り一方通行になりがちです。国内環流に伴う円買いが細っているのです。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1176文字 / 全文1912文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「三田敬大のマーケット目線で読む世界」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?