企業の四半期開示の見直しが佳境を迎えている。自民党の金融調査会は企業の決算開示に関する提言案をまとめており、政府・金融庁は具体的な検討に入るという。だが、見直しを巡っては議論が錯綜(さくそう)しているのが実態だ。論点はいったいどこにあるのか。見直しに賛成の立場で、欧州の四半期報告書制度の強制が廃止された際に英オックスフォード大学ビジネススクールで「会計とサステナビリティ学」の主任教授を務めた経験を持つ早稲田大学商学学術院のスズキ・トモ教授に聞いた。

スズキ・トモ氏
スズキ・トモ氏
1967年生まれ。90年に監査法人朝日新和会計社(現・あずさ監査法人)入所。英オックスフォード大教授を経て2017年早稲田大学商学学術院教授。

四半期開示の見直しの必要性を指摘しています。なぜでしょうか。

スズキ・トモ早稲田大学教授(以下、スズキ氏):もともと、四半期開示は2000年代初頭に小泉純一郎・竹中平蔵の両氏によるサプライサイド・エコノミクスの推進過程で出てきたものです。より多くの情報をより頻繁に投資家に提供することで、1400兆円もの家計金融資産の一部を企業部門に循環させ、新たな投資による生産能力増強や資源配分効率化、日本経済の活性化を促そうとしました。政府の公表資料でも確認できます。

 当時の考え方自体は否定しません。しかし、約20年たった今振り返れば、そうした政策導入の目標は達成できていません。現実は逆に、大量の資金が配当などを通じて企業から投資家に流出し続けています。目的が達成できていなければ、原状回復をするのが原則でしょう。

資本市場は企業から株主への資本流出の場に
資本市場は企業から株主への資本流出の場に
(注)東証「上場会社資金調達額」、有価証券報告書データをもとにスズキ氏作成
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海外では四半期開示はなお主流との指摘もあるようですが。(金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの2月18日の資料では、英・仏の6割・8割で四半期開示が継続しているという)

スズキ氏:事実誤認で、ミスリーディングなデータだと思います。日本の四半期開示制度と比較して制度の議論をするためには、少なくとも損益計算書(PL)・貸借対照表(BS)を含む開示を対象にすべきですが、欧州でそうしたレベルの開示をしている企業はほとんどありません。金融庁のデータが「開示している」というのは、いわゆる「経営者ステートメント」です。A4数枚の簡単なコメントで、PLもBSもなければ監査も伴わないものです。

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