ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに商品市況(コモディティ・マーケット)が大荒れだ。特に原油価格(北海ブレント先物価格)は3月上旬に一時約14年ぶりの水準まで高騰。貴金属や穀物でも価格の高騰が目立つ。幅広い資源を輸入に頼る日本企業、さらに消費者にとっても影響は大きい。今後のシナリオをどう考えればよいのか。企業向けに価格リスクのコンサルティングを手掛けるマーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表に聞いた。
原油価格(北海ブレント先物価格)が3月上旬に一時1バレル100ドルを大きく上回りました。いったい何が起きているのでしょうか。
マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表(以下、新村氏):一大産油国であるロシアからの供給が途絶するという、想定していなかった可能性が高まったことによるものです。つまり、需要が増加して価格が上昇するわけではありません。現物を調達できなくなるリスクを意識した実需や、受け渡す現物を保有しない投機の買い戻しが急速に入り、大幅な上昇となりました。

過去のオイルショックでは、大きな生産力を持ち、外貨獲得手段として輸出する動機もあった産油国が、イスラエル陣営への供給を止めると決めたのが主因でした。いわばイデオロギーが経済合理性を上回った状況が起きたのです。その後、中東への原油依存が大きなリスクと意識され、石炭や原子力へのシフト、自国内での増産が起きました。こうした供給・調達構造を、エネルギー安全保障上、変化させる必要が出てきたという意味で、今回は「第3次オイルショック」といえるのではないでしょうか。

今後の価格は、短期的には戦況次第で大きく変わります。ロシアへの経済制裁をどこまで強めるかによって、供給が絞られるかどうかが変わりますし、逆にロシア側が反撃として供給を止めるかもしれません。足元(3月15日時点)は、「急に禁輸措置などの制裁は難しい」という見方から落ち着いていますが、今後は上にも下にも価格は大きく振れる可能性があります。
どんなシナリオを想定すべきでしょうか。
新村氏:まずベースになるのは、供給不安から100ドル超の水準が当面続いたとしても、資源価格の上昇や、これとは別に進んでいる各国の金融引き締めの影響で景気が減速し、年後半には(ロシアによるウクライナ侵攻前の)80ドル前後まで落ちるシナリオです。
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