イワシとナマズを同じいけすで運ぶ理由

 みなさんは、漁師が沖合で捕獲したイワシを元気な状態で港まで運ぶため、「同じいけすにナマズを入れておく」という話を聞いたことはありますか?

 イワシは生命力が弱く、港に着くまでに死んでしまいます。そこで、雑食性のナマズを一緒に入れておくのです。ナマズはイワシを襲うので、イワシに緊張感が出て生き延びようとする。その習性を利用しているのです。

 「魚」で例えるのはやや乱暴かもしれませんが、「同じ種だけでは緊張感がなくなる」というメカニズムは、動物だけでなく、社会性を備えた人間にも当てはまります。

 社会心理学の用語に「集団凝集性(しゅうだんぎょうしゅうせい)」(※FFS理論の「凝縮性」とは違います)があります。これは、集団が構成員を引き付けて、その構成員を集団の一員となるように動機付ける度合いのことです。

 「集団凝集性が高いほど、組織そのものの拘束力、そして成果が高い傾向がある」と言われていて、そのためには「組織の中に多様な人材が存在する」ことが前提になっています。つまり、構成員の多様性は、集団凝集性を高めるために重要な要素の一つです。

 多様性があるほど、組織は凝集性が高くなる。面白い事象ですよね。でも「えっ」と思われた方も多いのではないでしょうか。

多様性が担保されにくい日本の事情

 実は日本では、若干様相が異なります。

 「保全性」の高い人が全体の65%を占める日本では、協調性が重んじられる一方で、異質を排除するメカニズムが働き、組織は“結果的に”同質化する傾向があります。

 つまり、日本における集団凝集性が高い組織は、結束力や拘束力を求めるがゆえに、「保全性」の高い同質組織になる、ということです。

 「保全性」の高い同質的組織は、意思疎通がしやすいため、短期的にはそれなりの成果を出します。しかし、長期的には、同質であることが逆に緊張感を失わせ、なあなあな状態になり、成果は下がる傾向にある。これが我々の知見です。

 さらに、「保全性」の同質組織では、同調圧力が働いて異論が出にくいため、結論が偏りがちになります。これは社会学者のアージリスが指摘した「グループシンク」(集団浅慮:集団で何かを決めるときに、多様な視点からの検討が行われないこと)の問題でもあるのです。

 実際、我々がワークショップ等で「保全性」の高い同質チームを編成し、課題に取り組んでもらった後にメンバーに感想を聞くと、「居心地は良いが、生産性は低い」という回答が得られています。

 つまり日本では、組織の凝集性を高めようとすると「保全性」の同質化に陥りやすく、生産性が上がるどころか、下がる傾向があります。そうならないためには、組織の多様性を意図的に担保していく必要があるのです。

 いくつかの企業では、「居心地の良さは、生産性を阻害する」ことを経験的に学び、意図的に“混沌な状態にする”マネジメントを取り入れています。例えば、リクルートやソニー、ホンダ等です。偶然かもしれませんが、FFS理論を導入している企業が多いようです。

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