子どもにブレーキをかけてしまう親
子どもがいきなり「東大を目指す」と言い出したら、「保全性」の高い親は、「うちの子が東大なんて」と戸惑うでしょう。もちろん、本当に合格したら、世間体は悪くない(むしろ周りに羨まれる)ので“嬉しい”のでしょうが、半面で「失敗したらどうしよう」と不安に思ってしまいます。
失敗したら子どもがかわいそう。そう思うから、“子どものため”という枕詞が付きますが、本当は「失敗してほしくない」「安定した生活をしてほしい」「滞りも、寄り道もしてほしくない」という親自身の願望であることが多いのです。
そして、そんな親が一番恐れるのは、「落ちこぼれ」「受験失敗」「浪人」なのです。
その理由は、親自身が「世間の目を気にしている」ことに関係します。加えて、子どもが失敗した場合、「親として子どもにどう接してあげればよいのか分からず不安」というのも理由の一つです。
子どもを「信じている」つもりでしょうが、自分自身の不安が頭をもたげて、ついつい子どもが志望する未来をけん制したり、反対したりして、自分が安心できる方向へ導こうとします。結果的に、子どもを「信じていないような振る舞い」に陥るのです。
こうした言動になるのは、「保全性」の思考が「内向的」な特徴を持つからです。
「保全性」には、「枠組み」を作って、その内側をしっかりと抜け漏れないように整えて、精緻化し、安全・安心を担保していこうとするメカニズムがあります。安全・安心が担保できると、その枠の中では自由に振る舞うことができ、さらにその場をより居心地よく改善していこうとします。そして、少しずつ枠組みを広げていく。つまり、すでに経験したことを土台に積み上げていくことを重視します。
「保全性」の高い人は、これを繰り返すことで、一歩一歩前へ進んでいきます。
簡単に言えば「やったことがある」ことならば、落ち着いて自信を持って対応できる。
例えば、小さい頃から“お受験”に取り組んでいた家庭であれば、「東大受験」はある程度想定内のルートかもしれません。また、海外留学を経験したことのある親にとって、「海外留学」は“枠組みの範囲内”なので、子どもが「海外留学したい」と言い出しても、その選択肢は想定内です。親が東大出身者であれば、子どもが東大を目指すのも、既定路線です。自分の経験を基に、子どもの挑戦の精度をより高めようとするでしょう。
しかし、そうでなかった親にしてみれば、子どもが急に「東大に行きたい」と言えば、「分不相応」と思ったりします。守るべき存在である子どもが、自分の枠組みの外へ飛び出していくことに不安を覚えます。
そして、ここでも世間体を気にするのです。
「誰々さんの子どもは、幼稚園から準備しているから分かるけど、うちなんて……。笑われるのがオチ」
と、子どもはさておき「自分の評判」が気になるのです。
だから、子どもに対して「良かれ」のつもりが、自分にとっての無難な選択として、ついブレーキをかけてしまうのです。
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