この連載ではコロナ禍に苦しみながら前を向く外食企業を取り上げてきた。焼き鳥居酒屋約620店舗を運営する大手の鳥貴族ホールディングスも例外ではなく苦境が続く。その中で今夏に新業態のチキンバーガー専門店「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」を夏に開業すると発表した。なぜ今このタイミングで、新業態なのか。そして今後の鳥貴族をどのように成長させていくのか。鳥貴族ホールディングスの創業者である大倉忠司社長に聞いた。

外食店への逆風が続いています。足元の状況をどのようにみていますか。

大倉忠司・鳥貴族ホールディングス社長(以下、大倉氏):政府や自治体の時短要請に翻弄されています。営業終了が午後9時から午後8時へと1時間ずれるだけでも大きく変わります。午後6から午後9時が居酒屋としてのゴールデンタイム。8時まで営業していてもお酒の提供が7時までだとお客様は来店しません。

鳥貴族ホールディングスの創業者で社長の大倉忠司氏(写真:水野 浩志)
鳥貴族ホールディングスの創業者で社長の大倉忠司氏(写真:水野 浩志)

 61年間の人生で初めての体験です。「不要不急の外出をしないでくれ」というのは、外食を否定されているようなものですから。もちろん雇用調整助成金などで国には助けてもらっていますが、やはり会社は自分で守らなきゃいけないんだと改めて思いました。

日本でもワクチン接種が徐々に進んでいます。

大倉氏:ワクチンの接種が進んでいる海外の状況などを見て非常に期待しています。特に感染リスクが一番高い高齢者が6月末ごろまでに接種し終わるそうですが、やはり高齢者がワクチンで安心できるようになると世の中の雰囲気も良い方向にいくんじゃないかなと思っています。鳥貴族は20~30代のお客様が全体の8割ぐらいなので、そういった意味でも健康に自信を持っている方が多いのですが、一番のリスクは若い方から高齢者に感染が広がることだと思うので、高齢者に接種が行き渡ることには大きな期待をしています。

新型コロナウイルスの感染拡大によって人々の生活は変わりました。デリバリーの伸長などもあり、外食産業も大きく変わったのではないでしょうか。

大倉氏:人々の生活はコロナ禍の中で変わりましたが、アフターコロナになれば、その変化は戻ると私は考えています。テレワークなどがある程度進んだので、元の形に100%戻るとは思っていませんが、海外の状況を見てもレストランが再開されると「待ってました」とばかりにお客様が来店しています。

 人類は過去にも感染症を経験してきたわけじゃないですか。それでもハグや握手をするし、人と接する。外食には内食や中食にはない魅力があります。人間はもともと人とつながりたいもの。高齢で足元がちょっとおぼつかないような方でもわざわざ外食に来てくれるというのはそういうことだと思うんですね。

 その外食の中でも特に居酒屋はコミュニケーションの場として使われています。居酒屋文化は歴史があります。その文化がなくなることはないと思っています。居酒屋業界が新型コロナで大きくダメージを受けたという印象が強いので、皆さんがちょっとネガティブになりすぎていると思います。

チキンバーガー専門店「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」という新業態を今年夏に開業すると3月に発表しました。会社を守るための戦略なのでしょうか。

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