東京都や大阪府などに3度目の緊急事態宣言が発令され、ますます苦境に追い込まれている外食業界。その中でもとりわけ厳しい環境にあるのが、居酒屋だ。食材の生産から一貫して自社で管理する「生販直結」や顧客が来店するごとに「昇進」する「名刺システム」で根強い常連を獲得してきた「塚田農場」を運営するエー・ピーホールディングス(HD)も、例外ではない。2020年4月2日には業界に先駆けて店舗を一斉休業させ、同年夏には一時債務超過にまで陥った。同社がコロナ禍の中で苦闘する様子は『「塚田農場」COOに密着! 続くコロナ禍で居酒屋は生き残れるか』でも触れた。同社はコロナ禍の中をいかに生き抜き、コロナ後をどう見据えているのか。米山久社長に聞いた。

米山 久(よねやま・ひさし)氏
エー・ピーホールディングス社長執行役員CEO(最高経営責任者)。1970年東京都生まれ。不動産、販売代理店業などを経て2001年エー・ピーカンパニーを設立。04年に飲食業に本格参入し、07年「宮崎県日南市 塚田農場」を出店。食材の生産、仕入れから店舗での提供までを一貫して自社で管理する「生販直結モデル」や、来店するごとに顧客の肩書が「昇進」する「名刺システム」などの独自性を強みに店舗網を拡大してきた。現在は約40ブランド、200店舗を運営している。

昨年春の最初の緊急事態宣言から1年あまりがたちましたが、コロナ禍の収束はまだ見えないままです。足元の状況はいかがでしょうか。

米山久エー・ピーホールディングス社長(以下、米山氏):1度目の緊急事態宣言のときは補償がないまま休業に入り、その後1年近くは何の補償もない状態が続きました。最近になってやっと大企業は1日最大で20万円の協力金が支給されるようになり、1年がかりでやっと「まとも」になったといえるでしょう。赤字は赤字だけど、次を見据えて考えられることも、増えてきました。

 これぐらいの補償であれば、多くの企業は納得できるでしょう。一律6万円の頃に比べれば大きな進歩です。我々もやっと先を見据えた準備に入れます。

 コロナだからとあまり短期的な対応はしたくないのですが、テークアウト、デリバリー、ゴーストレストランなど色々やらざるを得ない状況です。個人的にはこれらの事業はコロナ期間中だけのことだと思っているので、労力が無駄と感じることもあるのですが、無理やり導入しました。

大手の間でも業態転換や新事業の開始といった動きが活発になっています。

米山氏:話題性ばかり重視するよりも、アフターコロナにおいても生き残ることが大事だと思います。居酒屋が焼肉屋になるなんて無理がありますよ。だから我々は、自社の強みも生かしつつ、持続的に取り組める事業を今まさに準備しているところです。

 「急ごしらえの薄っぺらな業態」が次々に生まれては消えていく。外食業界はこの繰り返しでした。コロナ下の外食でもそんなことが起きています。「模倣」や「パクリ」であってもオープンから数年間は持つでしょうが、短絡的な事業が次々と生まれることは尊敬できないノウハウとして今でも残っていることを感じました。我々は地鶏の生産から仕入れ、調理までを一貫して行っている「生販直結」が根底にありますし、今後もそれを大事にしていきたいですね。

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