3度目の緊急事態宣言が発令され、厳しさを増す外食業界。このシリーズでも「塚田農場」を運営するエー・ピーホールディングスやプロントコーポレーションが生き残りを懸けて苦闘する様子を取り上げてきた。
(関連記事:「塚田農場」COOに密着! 続くコロナ禍で居酒屋は生き残れるかカフェ&バー「プロント」34年目の大転換、「誰のための何屋なのか」

 このような環境の中でも、コロナ前から消費者の飽きや人手不足、価格競争という外食企業の構造問題にあらがってきた企業は粘り腰を見せている。全国に約600店を構える「やきとり大吉」もその1社だ。駅から離れた住宅街に「10坪20席」の小規模店を展開する独特のスタイルが、コロナ禍で耐久力を見せている。

 フランチャイズ(FC)本部を運営するダイキチシステム(大阪市)の牟田稔会長は、「うちのビジネスの根幹がうまく機能していることが分かった」と自信を深めている。出店希望者の募集には、「20年前のバブル崩壊後と同じ雰囲気」(牟田会長)の今、追い風が吹いているという。この逆境で、どのような勝機を見いだしているのか。

 3月末、京都府八幡市のやきとり大吉八幡男山店。大吉の店主になって35年の水元克浩さんが午後5時にのれんをかけると、家族連れや友人同士のお客がやってきた。最寄り駅から徒歩30分弱で好立地とは言いがたいが、近隣住民の日常使いを取り込んでいる。

やきとり大吉八幡男山店(上)と店主の水元克浩さん(下)

 営業時間を短縮している間も、開店直後に訪れた客が帰る頃に入れ替わるように次の客が来るのが「地元密着の店らしさ」(水元さん)。時短営業中も週末は予約でいっぱいになっていたという。

 八幡男山店は水元さんにとって4店目になる。兵庫県尼崎市、神戸市、京都府長岡京市と移り、今の店に落ち着いた。やきとり大吉はFC本部であるダイキチシステムに店舗を借りるか、店舗を所有して開業するかを選べる。前者の場合、店は本部が選ぶ。水元さんは、「最初の店も駅から遠くて半年で潰れると思ったが、2年で1500万円貯金できた」と振り返る。

 やきとり大吉のビジネスモデルを支えるのが、「10坪20席」という小さな店構えだ。外食店は、材料費が3割、人件費が3割、そこから家賃などを差し引いて利益が1割残れば優等生とされる。

 大吉も材料費の比率は変わらないが、人件費と家賃が低い。基本的に店主含めて2人で運営するため、人件費は1割前後。夫婦で運営するケースも多い。本部に払うロイヤルティーは月3万円で固定され、家賃は駅から離れているので安くてすむ。

 ほかの居酒屋と同様、コロナの打撃は小さくなかった。全店から抽出した既存店約70店舗の売上高は、20年4月は3割まで低迷。夏場以降、7~8割に戻したが、年明けの2度目の緊急事態宣言では6割に落ちた。今回の3度目の緊急事態宣言も影響は避けられない。それでも「売り上げが減った影響はなんとか吸収できている」(水元さん)という。家賃や人件費といった固定費が抑えられていることに加え、食材はフランチャイズ本部ではなく、各店主が地元の業者からそれぞれの判断で仕入れており、調整が利くことが背景にある。

八幡男山店は水元さんにとって4店目。2店目は阪神大震災で全壊した

 ダイキチシステムの牟田会長は、「売り上げが2~3割減っても店主たちは食べていける」と胸を張る。これまでも鳥インフルエンザや、飲酒運転の厳罰化で売り上げが大きく下がった時期を耐え抜いてきた。

 ダイキチシステムは一切直営店を抱えず、加盟店主の支援に徹している。水元さんは2店目が阪神大震災で全壊したが、「本部が7カ月で次の店を探してきてくれた」。3店目は駅の再開発で人流が変わって売り上げが落ちたため、今の店に移った。店主にふさわしい店をあてがうのは、チェーンらしからぬサポートぶりだ。

続きを読む 2/2 取引先の酒販店が店舗の様子をチェック

この記事はシリーズ「コロナ禍で芽吹く「外食新時代」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。