石油需要の減少や過疎化、高齢化など様々な課題に直面している石油販売業者。業界団体である全石連の森洋会長に、世界的な潮流となっている脱炭素や自動車の電動化、ガソリンスタンド運営の今後について聞いた。

政府の表明した2050年のカーボンニュートラル目標や、2035年の新車販売電動化など、ガソリンの販売にとっては向かい風が吹いている状況です。どう受け止めていますか。

森洋・全石連会長(以下、森氏):昨年10月の所信表明で、菅義偉首相が「2050年にカーボンニュートラルを目指す」と表明されたのを受け、非常に驚いたというのが偽らざる気持ちです。我々の業界は今後どうなるのだろうと、事業者の方から心配の声があがりました。

 カーボンニュートラルについては個人的にも、もちろん賛成です。国際社会の潮流に対して、日本だけが嫌だというわけにもいきません。大変なことになるのは確かですが、やむを得ないと思っています。ただ、35年に新車販売の100%を電動化するという話については、やはり抵抗感があります。

<span class="fontBold">森洋(もり・ひろし)氏</span> 全国石油商業組合連合会・全国石油業共済協同組合連合会会長。2019年からは全国中小企業団体中央会会長も務める。1942年生まれ。
森洋(もり・ひろし)氏 全国石油商業組合連合会・全国石油業共済協同組合連合会会長。2019年からは全国中小企業団体中央会会長も務める。1942年生まれ。

 日本はまれに見る災害大国です。去年12月には大雪のため関越自動車道で何百台もの車が立ち往生しました。果たして、これが電気自動車(EV)だったらどうだったのでしょうか。

 地震や津波や洪水などの災害時に、「最後の砦(とりで)」となるのがガソリンスタンドです。停電時にはガソリンを使って発電することができますから、病院など地域インフラにとって重要な存在です。17年から3年間かけて約7000カ所のガソリンスタンドに自家発電機を配備し、災害時に燃料供給を続けられる体制を構築してきました。その後、国土強靱(きょうじん)化の一環としてさらに整備した方がよいのではとの声もあり、19年の終わりに追加で8000カ所に配備していくことを決めました。今後、全国に1万5000カ所の災害対応拠点のネットワークをつくろうとしています。

 私たちの業界は、7割が小規模事業者の方々です。1事業者が1つの給油所を運営している。特に地方にはそういう方々が多く、地域住民の命と暮らしを守ってくれているわけです。この全国に細かく張り巡らされたガソリンスタンドのネットワークは、何としても崩したくないということです。

地方では物販の店舗を併設し生活インフラとなっているガソリンスタンドも多い(岡山県津山市阿波地区のガソリンスタンド、写真:水野浩志)
地方では物販の店舗を併設し生活インフラとなっているガソリンスタンドも多い(岡山県津山市阿波地区のガソリンスタンド、写真:水野浩志)

 社会インフラとしての機能をどうしていくのか。こうした視点が全く欠けているのではないでしょうか。35年の電動化で、ハイブリッド車(HV)はともかくガソリン車はダメと。とにかくアドバルーンだけ打ち上げられました。では、今まで安定供給のために努力してきた方々は、何の議論もないままに淘汰されてよいものでしょうか。

最盛期には6万カ所あったガソリンスタンドの数は、半減して3万カ所を割りました。災害対応や安定供給を保てなくなる下限の数字に近づいてきているということですか。

森氏:そうですね。きめ細かい安定供給を実現し、地域住民の暮らしを守るためには、やはりそれくらいの数は必要だと思っています。ただ一方で、需要は年々下がっており、後継者や良い若い人材の確保も難しくなります。「石油を売っていて生き残れるのだろうか」と考えた後継ぎが、逃げていってしまう。こういった事業承継の課題も出てきています。

ガソリンスタンド拠点数とガソリン販売量の推移
<span class="fontSizeL">ガソリンスタンド拠点数とガソリン販売量の推移</span>
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 ですから、ガソリンスタンドの業態を変えながら生き残っていこうという努力は当然やっていく必要があります。道の駅の機能を付けたり、郵便局のようなユニバーサルサービスを提供したり、あるいは宅配拠点にしたり。知恵を絞りながらやっています。例えば、消防法の規制緩和によって、ガソリンスタンドで中古車販売ができるようにもなりました。地域コミュニティーに何が還元できるのか。こういった目線がこれからのポイントになってきます。社会貢献しながら地域に根差していく道しかないでしょう。

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