
糖尿病になると心筋梗塞、脳卒中も起こしやすく
ご存じの通り、糖尿病とは血液中に含まれるブドウ糖、すなわち血糖値が高くなる代表的な生活習慣病だ。2016年の「国民健康・栄養調査」によると患者数は約1000万人。その手前の予備群も同じくらいいて、合わせると実に2000万人に達する。
血糖値が高くなっても自覚症状は何も感じられないが、高血糖の状態が長年続くと深刻な合併症が起こるようになる。網膜症、腎症、神経障害が3大合併症として知られるが、さらに心筋梗塞、脳卒中、足の動脈硬化(末梢動脈疾患)も起こしやすくなる。
糖尿病は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいことも分かっている。「糖尿病になると免疫力が落ちて感染症のリスクが高くなりますが、新型コロナウイルスに感染した場合、健康だった人に比べて死亡率が約3倍に上がります」と国際医療福祉大学教授の小田原雅人さんは指摘する。
感染症だけではない。糖尿病になると日本人の死因トップ10に入る病気の多くを発症しやすくなる。がんは1.2倍、心疾患や脳卒中は2~4倍、さらに認知症も約2倍リスクが高くなるという。
「心筋梗塞など冠動脈疾患を起こす人の57%は糖尿病で、糖代謝異常のない人はわずか14%しかいなかったという報告もあります。福岡県久山町で行われた大規模な疫学研究から、糖尿病患者はもちろん、予備群のレベルでも心筋梗塞や脳卒中のリスクが明らかに上がることが分かりました」(小田原さん)
腎臓を守るには血糖値と血圧のコントロールが重要
3大合併症の1つである「糖尿病性腎症」も怖い。
進行すると腎不全になり、定期的に透析治療を受けなければ生きられなくなってしまう。週に何回も医療機関に通い、1回ごとに数時間ずつ奪われる。当然、できる仕事は限られてくるし、長期の海外旅行になど行けない。QOL(生活の質)は大きく下がることだろう。
昭和の時代、透析治療に至る病気はほとんど慢性糸球体腎炎(*1)だった。ところが年々減っていく慢性糸球体腎炎に対し、糖尿病性腎症は右肩上がりで増え続け、約10年前に逆転。2019年末の調査では、約4割を占めるまでになっている(下グラフ)。
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