1日の糖質摂取量を70~130g程度に収めるゆるやかな糖質制限(Low-Carbohydrate Diet;ロカボ)を3カ月間行うと、カロリー制限は特に設けなくても体重減少や血糖値の改善などが得られることが、北里大学北里研究所病院糖尿病センターの山田悟氏らの研究で明らかになりました。

ゆるやかな糖質制限食では、主食1回あたりの量は茶碗に半分程度。(写真=123RF)
ゆるやかな糖質制限食では、主食1回あたりの量は茶碗に半分程度。(写真=123RF)

カロリー制限なしで糖質だけをゆるやかに減らす

 日本では、メタボリックシンドローム(メタボ)の拾い上げや生活習慣病の発症予防などを目的として、40歳から74歳までの人たちを対象に特定健診(いわゆるメタボ健診)が行われています。しかし、メタボ健診で生活習慣病の発症リスクが高いとみなされ、特定保健指導で「摂取エネルギー(カロリー)を減らして運動するように」と指示されても、忙しい毎日の中での継続は容易ではありません。

 そこで山田氏らは今回、特定保健指導の対象となった人たちを対象に、より簡便な3カ月間のプログラムを考案し、体重減少などに対する効果を検証することにしました。このプログラムは、「摂取エネルギーに制限は設けず、ゆるやかな低糖質食に関する教育と指導のみを行う」というもので、1日の糖質摂取量は70~130gに設定しました(1食あたり20~40g、間食として10gまでは許可。主食の1食あたりの目安は、白飯なら軽く茶碗半分、食パンなら6枚切りを半分から1枚程度)。

 このプログラムの有効性を評価するため、同氏らは、特定保健指導の対象に選ばれたコンビニエンスストアの従業員とタクシー運転手にプログラムに参加してもらい、開始時と終了時の体重や血糖値、コレステロール値などの変化を観察することにしました。

メタボまたは肥満のあるシフトワーカーに参加を呼びかけ

 コンビニエンスストアの従業員とタクシー運転手は、いずれもシフト勤務であるため、食事のリズムが崩れやすく、運動習慣を維持しにくい人たちです。これらの職種で、特定保健指導の支援対象に選定されたメタボまたは肥満の人の中から、脂質異常症の治療薬(コレステロールを下げる薬など)や糖尿病の治療薬を服用していない、などの条件を満たす人を募集し、2016年春から2018年秋にかけて、1年に2回、それぞれ10~30人ずつ登録しました。

 参加者には最初に、低糖質食に関する60分間のセミナーを受講してもらいました。内容は、糖尿病とメタボが健康に及ぼす悪影響と、低糖質食の有効性・安全性に関する説明、食物の選び方についての指導などからなり、低糖質食を提供しているレストランも紹介しました。

 同日、採血を行い、身長と体重を測定しました。その後、参加者には、12週間にわたって毎日食事の内容と体重を記録し、データを毎週送るよう依頼しました。研究者たちは、提出された記録を見て、3日以内にコメントや助言を送り、さらに、習慣的な運動を継続するよう勧めました。また、研究期間中には、新たに糖尿病治療薬と血糖降下薬の使用を開始しないように注意しました。

 12週間後に再び採血し、ヘモグロビンA1c(HbA1c;過去1~3カ月の血糖値の状態を反映する指標)やコレステロール値中性脂肪値などを測定しました。46人についてはその場で体重も測定して、BMIを計算しました。なお、2016年に参加した39人には、手首と指に装着するモニターを貸与し、自宅で睡眠時無呼吸症候群の簡易検査も実施しました。これは、メタボと睡眠時無呼吸症候群の間に双方向の関係がある(メタボだと睡眠時無呼吸症候群を発症しやすく、睡眠時無呼吸症候群だとメタボが進行しやすい)と言われているために、ゆるやかな低糖質食には睡眠の質を改善する可能性もあると考えたからです。

 参加者が提出した日々の食事の記録から、摂取エネルギーや栄養素の摂取量の計算や、食事の内容がゆるやかな低糖質食の条件を満たしていたかどうかの評価は行いませんでした。

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