緊急事態宣言も明け、今後は飲み会も増えてくる。忘年会や新年会、歓送迎会なども開かれるかもしれない。注意したいのは、コロナ禍で飲酒の機会が減っていて、「酒に弱くなっている人」だ。つまり、以前は飲酒によって増えていたMEOSの酵素が誘導されておらず、アルコールの代謝能力が落ちているので、かつてのようには飲めない可能性がある。

 浅部さんによると、「血中アルコール濃度を急激に上げない飲み方」を実践するといいそうだ。

 「血中アルコール濃度を急激に上げないためには、空腹で飲まないことが大切です。空腹で飲むと、アルコールが吸収されやすい小腸にお酒がすぐに到達し、すみやかにアルコールが吸収されて、血中アルコール濃度があっという間に上がります。胃の中に食べ物があると、アルコールも胃の中にとどまり、吸収をゆっくりにすることができるのです」(浅部さん)

 それでは、飲む前にどのようなものを食べておくといいのだろうか。

 「油分を含む食べ物を先にとっておくと、消化管ホルモンの一種であるコレシストキニンなどが働き、胃の出口となる幽門が閉まります。これによって、胃におけるアルコールの滞留時間が長くなり、悪酔いを防ぐことができます。ただ、揚げ物ですと衣についた油が多く、中性脂肪の増加につながる恐れがありますから、チーズやドレッシングに油を使ったサラダなどにとどめておくのがお勧めです」(浅部さん)

 ほかにお勧めのつまみを浅部さんに聞くと、「冷ややっこや枝豆、かつおやまぐろの刺身などを選ぶといいでしょう。いずれも肝臓でのアルコール代謝を促進する働きがある、たんぱく質やビタミンB類などが豊富です」とのことだ。

 また、酒と一緒にを飲むことでも、血中アルコール濃度の急激な上昇を抑えることができる。特に、アルコール度数の高い酒を飲むときは、チェイサーとして水を忘れずに飲むようにしたい。

「適量飲酒」は1日当たり20gで変わらないが…

 アルコールの分解能力には個人差があるので、自分なりの「血中アルコール濃度を上げない飲み方」を把握することが大切だ。その上で、いったいどれぐらいの量の酒を飲むのが適切なのか、浅部さんに聞いてみた。

 「先ほどの『Lancet』の論文などで、少量飲酒でも疾患のリスクが上がることが明らかになってきましたが、日本人の『適量飲酒』は、厚生労働省の定めた純アルコールに換算して1日20g(日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインなら2~3杯)程度であり、これは以前から変わっていません。また、女性はアルコールの影響をより受けやすいので、その半分から3分の2程度が適量だとされています」(浅部さん)

 1日20gよりもっと飲みたいのであれば、休肝日を設けるなどして、1週間単位で調整するといい、と浅部さんは話す。

 とはいえ、「この量までなら誰でも飲んでいい」という基準は、一律には決められないはずだ。人によって体質が違うように、アルコールによってどのような病気のリスクが上がるのかについても、人によって違ってくるからだ。

 そこで次回は、自分にとってのアルコールのリスクをどう考えればいいのかについて、引き続き浅部さんに話を伺おう。飲むと顔が赤くなる人、健診で血圧や血糖などの数値が悪い人、糖尿病などの持病を持つ人など、具体的なケースごとに聞いていこう。

(図版制作:増田真一)

浅部伸一(あさべ しんいち)さん 自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授 肝臓専門医
浅部伸一(あさべ しんいち)さん 1990年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、虎の門病院消化器科、国立がん研究センターなどを経て、肝炎免疫研究のため米サンディエゴのスクリプス研究所に留学。2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社に所属。好きな飲料はワイン、日本酒、ビール、ハイボール。最近、泡盛も加わった。

[日経Gooday(グッデイ)2021年12月6日掲載]情報は掲載時点のものです。

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