活性酸素は、過剰になると老化やがん、生活習慣病にもつながると考えられている。アルコールが原因のさまざまな疾患は、この過剰な活性酸素による細胞障害が引き起こすのではないか、という説もあるようだ。
「お酒が弱かった人が飲み続けるうちに強くなるのは、薬などを代謝するMEOSの酵素が誘導されて、アルコールの代謝に使われるようになるからです。日頃からよくお酒を飲む人は、CYP2E1だけでなく、より多くの物質の代謝に関わるCYP3A4を含めたMEOSの酵素が多く誘導されているため、薬の作用にも影響すると言われています。薬が効きにくくなったり、反対に効きすぎたりすることがあるのです」(浅部さん)
酒飲みであれば、「大酒飲みには薬が効かない」という話を一度は耳にしたことがあるだろう。薬の説明書に「服用の際、アルコールは控えてください」と書いてあるのは伊達ではない。多くの薬は肝臓で代謝されるので、酒と薬を一緒に飲むと競合が発生し、酵素の取り合いになってしまうこともあるのだ。
「似たような話はグレープフルーツにもありますね。グレープフルーツに含まれる成分がMEOS(特にCYP3A4)の酵素の働きを一部阻害し、降圧薬などの作用を強めてしまうというものです」(浅部さん)
健康なうちは薬にお世話になることはないかもしれないが、何かの疾患を抱えた場合、定期的に薬を飲む生活になる。その際、酒と薬を一緒に飲むのはもってのほかだが、薬の効果を弱め(あるいは強め)ないよう、アルコールの大量摂取にも注意したほうが賢明だ。
血中アルコール濃度をゆっくり上げれば悪酔いしない
ここまで、アルコールの2つの代謝経路、そして代謝によって生成された物質がカラダに与える影響について聞いてきた。続いて、酒を飲んだときに起きる「酔い」という現象について教えてもらおう。
アルコールは主に肝臓で分解されるが、それには時間がかかる。アルコールは、分解され尽くすまで、血液によって体中を移動している。つまり、「血中アルコール濃度」を見れば、カラダの中にどれぐらいアルコールが残っているかが分かる。
「血中アルコール濃度は、体内に入ったアルコールと、肝臓が分解する量とのバランスで決まります。肝臓の分解能力が低い人は血中アルコール濃度が上がりやすい傾向にあります」(浅部さん)
厚生労働省は、血中アルコールと酔いの症状を以下のようにまとめている。
爽快期(血中アルコール濃度20~40mg/dL)
症状:陽気になる、皮膚が赤くなる
ほろ酔い期(血中アルコール濃度50~100mg/dL)
症状:ほろ酔い気分、手の動きが活発になる
酩酊初期(血中アルコール濃度110~150mg/dL)
症状:気が大きくなる、立てばふらつく
酩酊極期(血中アルコール濃度160~300mg/dL)
症状:何度も同じことをしゃべる、千鳥足
泥酔期(血中アルコール濃度310~400mg/dL)
症状:意識がはっきりしない、立てない
昏睡期(血中アルコール濃度410mg/dL以上)
症状:揺り起こしても起きない、呼吸抑制から死亡に至る
「お酒が弱い人は、少量のアルコール摂取でも血中アルコール濃度が高くなります。また、お酒を飲み慣れていない人は、自分がどれぐらい飲めば危険かということが分からないので、より気をつけて飲んでほしいですね。ピッチを落として、ゆっくり飲むことを心がけましょう」(浅部さん)
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