
このところ、「酒」に対する風当たりが強い。
コロナ禍に、酒場が新型コロナウイルスの感染リスクの高い場所として名指しされ、さらに厳しくなったように思う。
思い返せば、酒への逆風は、世界的権威のある医学雑誌『Lancet(ランセット)』において、「少量の飲酒でも疾患のリスクは上がる」という趣旨の論文(*1)が2018年に掲載されてから吹き始めた(参考記事「お酒は少量であっても健康に悪かった!?」)。これまで信じられてきた「酒は百薬の長」という概念が崩れ、“適量”を飲酒する人は死亡リスクが低いことを示す「Jカーブ」のグラフも疑問が持たれるようになった(*2)。
しかし、である。
病気になるリスクを限りなくゼロにするために、まったく酒を飲まないのであれば、これほど味気ない人生はない。これが酒好きの本音ではないだろうか。
リスクがあるなら、それをきちんと理解した上で、自分が納得のいく範囲で酒を楽しみたい。そのためには、一度基本に立ち返り、アルコールがカラダに影響を与える科学的なメカニズムを専門家に教えてもらいたい。
そこで、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授で肝臓専門医の浅部伸一さんに話を伺った。
*2 Jカーブについては、過去の連載記事「『酒は百薬の長』はあくまで“条件付き”だった」を参照
酒に強いかどうかは「アセトアルデヒド分解能力」で決まる
先生、酒を飲むとカラダの中でどのようなことが起きるのか、アルコールが分解されるまでのプロセスを教えてください。
「アルコールは胃や小腸で吸収され、主に肝臓で分解されます。アルコール(エタノール)は、まず分解されて『アセトアルデヒド』になり、次に無害な『酢酸』になります。アセトアルデヒドの分解が遅い体質の人は、少量の飲酒でも顔が赤くなったり吐き気がしたりするフラッシング反応が起きます」(浅部さん)
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