口臭は、本来自分では感じない?

 前述のアンケート調査では、13.5%の人が口臭が強いことを悩んでいた。ただし、口臭を悩んでいる人が、本当に口臭があるとは限らない。

 「実は人間が自分の口臭を鼻で感じることは、非常に難しいんです」と亀山さん。「なれるとにおいは感じにくくなります。鼻の中のにおいを感じる部分は体の中で口とつながっていて、非常に近いところにあります。口臭には常にさらされているため、なれてしまってにおいは感じられないはずです」

 ところが、自分で口臭を感じたと思う人はかなりいる。

 亀山さんらが東京歯科大学千葉歯科医療センターの口臭外来を受診した患者さんを対象に、口臭を意識したきっかけを調べてみたところ、約3分の2は「他の人から指摘された」と回答したが、「自分で気が付いた」「他の人の動作・しぐさから気づいた」という人も少なくなかった。

口臭を意識するようになったきっかけは?
口臭を意識するようになったきっかけは?
(Kameyama et al. Int J Dent 2015)

 また、口臭外来を受診した人について口臭のもととなる化学物質濃度を調べてみると、硫化水素は9割以上、メチルメルカプタンでは約半数が、人間の鼻で感知できる濃度に達していなかった。官能検査といって、スタッフの鼻で口臭を感じるかどうかを調べてみても、ほぼ同じ結果が出た。つまり、口臭を自覚していても、実質的に口臭がない人がかなりいる

 実際にはない口臭を、なぜ意識するようになるのだろう。前述の調査では、口の中が乾いた感じ(口腔乾燥感)がある人のうち8割くらいに、口臭の自覚症状があった。逆に口腔乾燥感がない人のうち、口臭の自覚症状がある人は半分くらいだった。どうやら口腔乾燥感があると、口臭を自覚しやすくなるようだ。

 「口腔乾燥感がある人には、口がネバつく、変な味がする、舌にコケのようなものが付着するなど他の不快感がある人が多くおられました。また、こういう口の中の不快感と口腔乾燥感には、相関関係がありました。どうやら、このような不快感から口の中が乾いていると感じ、口臭があるのではと意識するきっかけになるようです」と亀山さんは説明する。

マスクをしていればにおいは気にならない?

 最初に紹介したアンケート調査では、マスクによって「自分の口のにおいが気になるようになった」人が39.4%いた。確かに、マスクを長時間つけているとマスクがにおってくることがある。これは、口臭の影響だろうか。

 口の中はもともと高温多湿だが、マスクをつけるといっそう高温多湿になる。また、マスクをつけたままおしゃべりすれば、唾液を含む飛沫がマスクに付く。唾液には、口の中の細菌や、剥がれ落ちた古い細胞が含まれている。

 「唾液は本来無臭ですが、唾液中の細菌がエサとなる古い細胞を分解すると、においのもとになる物質が発生します。さらに、温度が高いと唾液中の水分が蒸発して、においのもとが凝縮され、においが強くなります」と亀山さんは説明する。

 アンケート調査では、逆に「口臭を気にすることが減った」人も25.4%いた。マスクをつけていれば、口臭が外へ漏れることを防いでくれるのだろうか。

 亀山さんによると、「においの分子は非常に小さくマスクを簡単に通り抜けてしまうので、マスクがあってもにおいを防げるとは限りません」とのことだ。

 「お互いにマスクをしていれば口臭を感じにくくはなりますが、すべてのにおいを感じなくなるわけではありません」と亀山さんは注意を促す。マスクをつけるからといって、油断は禁物だ。

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