
「肝硬変」――。
普段から肝臓を酷使している我々酒好きが、最も恐れる病気の1つである。
アルコールとの関係が深い肝硬変は、実際、酒好きの著名人も罹患している。直近では、女子プロレスのブル中野さんの闘病が記憶に残っている。漫才師の横山やすしさんなどは、肝硬変を患った末にこの世を去った。
私事だが、かつてよく通っていたスナックのマスターも、肝硬変によってこの世を去った。まだ50代の若さだった。酔うと客のボトルにまで手をつけるほどで、毎日の二日酔いを酔いでまぎらわせるような飲み方をしていた。壮絶だった彼の最期の様子を常連客から聞き、肝硬変の恐ろしさに背筋が寒くなったのを今でも覚えている。
コロナ禍の自宅飲みで酒量が増える人もいる今、改めて肝硬変について知っておきたい。武蔵野赤十字病院の院長で、「肝臓のスペシャリスト」として名高い泉並木氏にお話を伺った。
肝臓の組織が線維化し、硬くなるのが「肝硬変」
先生、そもそも肝硬変とは、肝臓がどのような状態になることなのでしょうか。
「肝硬変は、肝臓の組織が線維化(*1)することで、肝臓が硬くなってしまう状態を指します。硬さの原因はコラーゲンです。大量のお酒を日常的に飲み続けたり、肝臓の細胞に脂肪が蓄積したり(脂肪肝)、ウイルスに感染したりすることで肝臓に炎症が起こります。炎症が続くと、合成されたコラーゲン線維が増えていき、それが肝臓を硬化させ、肝機能を低下させていくのです」(泉氏)
肝硬変になると、肝臓がんの発症リスクも高くなる。この恐ろしい肝硬変は、どのように診断するのだろうか。
「通常は、肝臓の細胞を採取し、検査によって判断します(肝生検)。それよりも簡易な方法としては、超音波(エコー)で肝臓の硬さを調べる『超音波エラストグラフィー』や、MRI(核磁気共鳴画像法)で硬さを調べる『MRエラストグラフィー』などがあります」(泉氏)
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