血液型と脳梗塞の関係には血栓症のリスクが関与?
著者らは、血液型と脳梗塞の間に見られるこうした関係には、血栓症(血の塊が血管を詰まらせる病気)のリスクが関与しているのではないかと考えました。これまでにも、例えばO型の人では、他の血液型の人に比べ、血液凝固に関係するフォンヴィレブランド因子が3割程度少ないことが知られていたからです。O型の人は血液が固まりにくい反面、血栓が原因で発生する心筋梗塞や静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)といった病気が、他の血液型の人よりも少ないことも示されていました。
そこで、60歳未満で発症した静脈血栓塞栓症、および、60歳以上で発症した静脈血栓塞栓症と、血液型A1型とO1型の遺伝子に存在する多型の関係を調べました。その結果、これらの多型は、高齢期よりも早期に発症した静脈血栓塞栓症と強力に関係していることが明らかになりました。さらに、それらの多型は、血液凝固にかかわる因子(フォンヴィレブランド因子と血液凝固第VIII因子)の血中濃度とも強力に関係していました。
今回の研究結果は、ABO式血液型遺伝子座のうちのA1型とO1型の遺伝子の領域が、高齢期発症の脳梗塞よりも早期発症の脳梗塞と強力に関係していること、それらはまた、高齢期よりも早期に発症する静脈血栓塞栓症とも強力に関係していることを示しました。したがって、60歳未満での脳梗塞発症リスクは血液型A型で高くO型では低く、その背景には血栓形成傾向の違いが存在することが示唆されました。
ただし、60歳未満での脳梗塞発症にも生活習慣は大きな役割を果たすことから、血液型にかかわらず、危険因子の改善に取り組むことが予防において大切だと考えられます。
医学ジャーナリスト

[日経Gooday(グッデイ)2022年12月16日掲載]情報は掲載時点のものです。
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