加齢に伴う腎臓の機能の低下速度は、女性よりも男性のほうが速く、高齢になるとその差が顕著になることが、ノルウェーの一般的な中高年者を対象とした観察研究(*1)で明らかになりました。

約1800人の腎機能の変化を10年間追跡
世界のほとんどの国で、慢性腎臓病の患者は女性に多いにもかかわらず、人工透析や腎移植を必要とする末期腎不全の患者は男性に多いことが不思議がられています。
そこで、ノルウェーNorth Norway大学病院などの研究者たちは、同国の一般的な中高年者を対象として、加齢による腎機能の低下と性別の関係について検討することにしました。まず、加齢に伴って生じる腎機能の低下の速度に男女差があるかどうかを検討し、続いて、自然な腎機能の低下に全般的な健康状態が影響を及ぼすかどうかも調べることにしました。
2006~2008年にノルウェー北部の都市トロムソで、糖尿病、慢性腎臓病、心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)がないと自己申告した50~62歳の男女1837人(平均年齢58歳、53%が女性)を登録し、長期間追跡しました。登録時点と、2007~2009年、2013~2015年、2018~2020年に、腎機能の指標である糸球体ろ過量(GFR;腎臓の糸球体が1分間にろ過できる血液の量)の測定を行いました。
日本で健康診断を受けた場合に提示される腎機能の指標は、推算糸球体ろ過量(eGFR)といって、血液検査の結果(血清クレアチニン値)と年齢、性別に基づいて計算された推算値です。一方、今回の研究で採用されたGFR測定は、eGFRの算出よりも手間と時間がかかり、1回の測定で複数回の採血が必要になるものの、より正確に腎機能を評価することができます。対象となった1837人が、延べ4423回の測定を受けました。
GFRの測定を受けるために受診した患者には、毎回、喫煙習慣のほか、慢性疾患と診断されていないか、処方薬(脂質異常症、糖尿病、高血圧の薬など)の使用の有無、入院の有無などを質問しました。得られる情報に基づいて、その時点での健康状態を判定しました。「健康」と判定する基準は、「タバコを吸わない、糖尿病または高血圧ではない、BMI(体格指数)が30未満、たんぱく尿の有無と重症度を示すアルブミン・クレアチニン比(ACR)が30mg/g未満、心筋梗塞・狭心症・冠動脈血行再建術(狭心症や心筋梗塞によって狭くなった心臓の血管を再建する手術)・脳卒中・がんを経験していないと自己申告している、脂質異常症の薬(脂質降下薬)または心不全の薬(強心配糖体)を使用していない」としました。
Powered by リゾーム?