一方で、15~59歳の集団では、非接種者に比べ接種者の方が、流行期の心筋梗塞リスクは有意に高くなっていました。その理由を著者らは、「この年代でワクチンを接種していたのは、もともと心臓病と診断されている患者や、心血管疾患リスクが高いことを指摘されていた人が多かったのではないか」と考えています。

 また、表1を見ると、接種群の60歳以上の人々の心筋梗塞発症率は、インフルエンザ流行期間とそれ以外の間でほぼ同様ですが、非接種群では、インフルエンザ流行期のほうが発症率は高くなっています。非接種群における、流行期外と流行期の心筋梗塞発症率の差は、ワクチンを接種していなかったために生じたインフルエンザの重症化に起因する可能性が考えられました。

 今回の研究結果は、インフルエンザと低温はいずれも心筋梗塞の危険因子であること、インフルエンザの予防接種は、高齢者の心筋梗塞リスクの低下と関係することを示しました。また、ワクチンに心筋梗塞を予防する効果があることが示唆され、心筋梗塞リスクの高い人々に接種を促す必要があることが明らかになりました。

 論文は、2021年4月8日付のJournal of the American Heart Association誌電子版に掲載されています(*3)。

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday(グッデイ)2021年11月11日掲載]情報は掲載時点のものです。

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