
膵臓が、自ら分泌する膵液でドロドロに溶け、突然激しい痛みに襲われる「急性膵炎」。
前回「酒好きに悲報 急性膵炎になると「一生断酒」!?」の記事でお伝えした急性膵炎の痛みは想像を絶するもので、痛みのあまり悲鳴を上げてのたうち回ってしまうそうだ。何とも恐ろしい……。
「たくさんお酒を飲むと、アルコールの影響で膵液に含まれる消化酵素が膵臓内で活性化し、急性膵炎を引き起こす原因になります。また、胆石が膵液の出口を塞いでしまうことでも、急性膵炎になる場合があります」と説明するのは、帝京大学医学部附属病院肝胆膵外科教授の佐野圭二さん。
最も恐ろしいのは、「急性膵炎を発症したら、その後は断酒しなければならない」ということだ。アルコールが原因で急性膵炎を発症した人のうち、およそ半数は再発するといわれており、そのほとんどが断酒できなかったためではないかと考えられる。そして、急性膵炎を繰り返すと、1割程度は「慢性膵炎」に移行するという。
慢性膵炎は、「慢性」というだけあって、一度発症したら生涯付き合っていかなければいけないのだろうか? どのような治療が必要になるのだろうか。引き続き、佐野さんに解説していただいた。
毎日飲み続けると「慢性膵炎」のリスクが上がる!
先生、慢性膵炎は急性膵炎とどう違うのでしょうか?
「急性膵炎、慢性膵炎ともに、アルコールが大きな原因の1つであることは共通しています。前回もお伝えしましたが、急性膵炎はアルコールを飲み過ぎたときに上腹部を中心に急激な炎症が起こります。一方、慢性膵炎は長期間にわたる多量飲酒が原因で、膵液によって膵臓自体が徐々に溶けていき、次第にカチカチに硬くなり、萎縮していきます。一般に、5~15年という時間をかけて進行していきます」(佐野さん)
急激に強い痛みが走る急性膵炎も怖いが、時間をかけてゆっくりと膵臓が硬く萎縮していく慢性膵炎は、また違った恐怖がある。そして進行すると、膵がん(膵臓がん)になるリスクも高まるという。
しかし気になるのは、その「痛み」だ。膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、何か病気になっても症状が出にくいことが多いと聞く。「膵液によって、膵臓が徐々に溶けて硬くなっていく」というからには、自覚症状として、やはり痛みがあるように思うのだが。
「慢性膵炎の場合も、急性膵炎と同様に上腹部に痛みを感じます。慢性膵炎のステージには、代償期、移行期、非代償期という3段階があり、強い痛みを感じるのが代償期で、このとき膵臓の働きはまだ保たれています。移行期になると、膵臓の働きが徐々に衰え、痛みは軽くなり、膵臓に石がたまったり(膵石)、膵液の出が悪くなったりします。末期とも言える非代償期になると、膵臓がほぼ機能しなくなり、人によっては痛みがなくなることもあるのです」(佐野さん)
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