
「叱る」と相手の脳の恐怖反応の中核、扁桃体を活性化する
前回は、「褒め方」のコツには大きく2つがある、と教えていただきました。相手のやる気を高めたいときには「具体的な行動を褒める」、相手が意欲をなくしているときは「相手の存在そのものを褒める」ことが大事、ということでした。
今回は、「叱る」について教えてください。こちらは褒め方とは違う難しさがあるように思います。例えば、部下を叱らなければいけないときなどは、どうしても、相手の間違いを指摘するかたちになるので、相手を萎縮させるなどの“副作用”が起こることがあります。
篠原さん:では、「叱る」というシーンを具体的に想像してみましょう。ビジネスパーソンの方だと、「部下を叱る」ようなシーンを想定される方が多いと思いますが、ここでは脳の仕組みを理解するために、道に飛び出そうとする子どもに向かって母ちゃんが大声で「だめ!」と叫ぶシーンを例に解説しましょう。こんなとき、子どもはびくっとして止まります。このとき、脳の「扁桃体」が強く反応しています。
怖い顔で母ちゃんに叫ばれた子どもにはストレス反応が起こります。ストレス反応は、人間の体が危機を乗り越えようとする際に、瞬時に体勢を整えるために備わっている仕組みです。
例えば、山で熊に遭遇したとき、人の脳では扁桃体が活性化します。
扁桃体は「恐怖反応の中核」とも言われています。心理学ではこのような状態のことを「闘争・逃走反応(fight-or-flight response)」とか、「闘うか逃げるか反応」と呼び、このとき「3つのF」の反応が起こるとされています。
- Fight=闘う
- Flight(フライト)=逃げる
- Freeze(フリーズ)=固まる、すくむ
闘うか逃げるか、身をすくませるか。とっさに、体は身構えるわけですね。
篠原さん:とはいえ、獣に遭遇することはそうそうない現代の人間社会においては、扁桃体が活性化すると多くは「Freeze」=固まる系になります。
扁桃体が活性化したときには体にもストレス反応が起こります。自律神経を調節する視床下部に働きかけて交感神経が活性化し、血圧が高くなり、心拍数も上がります。

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