ニンジン、トマト、ほうれん草、カボチャなどの緑黄色野菜や果物に豊富に含まれるカロテノイドを積極的に摂取すると、がんや心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)による死亡のリスクが低下する可能性があることが、日本人を長期間追跡した研究で示されました。

カロテノイドはニンジン、トマト、ほうれん草、カボチャなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。(写真=123RF)
カロテノイドはニンジン、トマト、ほうれん草、カボチャなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。(写真=123RF)

血中カロテノイド濃度を年1回測定し、死亡リスクとの関係を検討

 野菜と果物の摂取は、死亡リスクの低減に役立つことが示唆されています。そうした保護的な作用は、野菜や果物に含まれるカロテノイドに起因する可能性があると考えられていました。カロテノイドは、強い抗酸化作用を持っているからです。

 これまでにも、カロテノイドの摂取と健康の関係に関する研究は数多く行われてきました。それらの研究は、参加者の血液中に含まれるカロテノイド(血清カロテノイド値)を測定し、その後の特定の病気の発症や、死亡との関係を検討したもので、カロテノイドはがんや心血管疾患などの予防に役立つという結果が既に示されています。

 死亡とカロテノイド摂取の関係を調べた研究も複数行われていますが、それらのほとんどは、追跡を開始する時点で1回だけ測定した血清カロテノイド値とその後の病気の発症、または死亡との関係を調べていました。

 しかし、食習慣は経時的に変化します。例えば、加齢により食の好みが変わったり、食品の供給状況が変化したり、健康に良い食生活に関する知識を得たりすると、特定の食品の摂取量が増えたり減ったりする可能性があります。

 そこで藤田医科大学の藤井亮輔氏らは、日本人の成人の血清カロテノイド値を年1回測定し、そこに反映される摂取量の変化も考慮して、総死亡、がん死亡、心血管疾患死亡のリスクとの関係を検討しました。

40歳以上の日本人3000人余りの22年分のデータを収集

 対象となったのは、北海道南部の八雲町の住民です。1990年から1999年までの期間に住民健診を受けた40歳以上の人々を登録し、毎年の健診の際に採取した血液に含まれる血清カロテノイド値を2011年まで測定しました。死亡の有無に関する追跡は2017年12月まで行いました。追跡期間の中央値は22.3年になりました。

 分析対象としての条件を満たしたのは3116人(平均年齢54.7歳、60.4%が女性)でした。追跡期間中に762人(24.5%)が死亡しており、このうち253人ががんによる死亡、210人は心血管疾患による死亡でした。

 カロテノイドとして測定したのは以下の各項目で、すべてを合わせたものを総カロテノイドとしました:ゼアキサンチンとルテイン、カンタキサンチン、β-クリプトキサンチン、リコペン(リコピン)、α-カロテン、β-カロテン、総カロテン(α-カロテン、β-カロテン、リコペン)、総キサントフィル(ゼアキサンチンとルテイン、カンタキサンチン、β-クリプトキサンチン)、プロビタミンA(β-クリプトキサンチン、α-カロテン、β-カロテン)。

 測定値と死亡リスクに影響を及ぼす可能性のある要因として、全般的な健康状態、生活習慣、受診記録、食習慣、喫煙歴、飲酒習慣や、脳卒中、狭心症、糖尿病、がんの診断の有無などに関する情報を収集しました。

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