肉体労働のレベルが高いと死亡リスクは上昇

 まず、余暇時間の運動レベルが低かった集団とそれ以外の集団で、MACE発生率を比較しました。分析に影響すると予想された、年齢、性別、BMI、喫煙歴、学歴、糖尿病の有無、収縮期血圧、降圧薬使用の有無、食事嗜好、飲酒習慣、COPDの有無、コレステロール値などを考慮して、MACEのリスクを比較したところ、低レベルの集団に比べ、それよりも運動レベルが高い集団のリスクは有意に低くなっていました(表1)。死亡のリスクも同様に、運動レベルが中以上の集団で有意に低いことが示されました。

 一方で、肉体労働について同様に比較すると、身体活動レベルが高い、あるいは非常に高い集団において、MACEと死亡のリスクが有意に高くなっていました(表2)。

表1 余暇時間の身体活動レベルとMACE*および死亡のリスクの関係
表1 余暇時間の身体活動レベルとMACE*および死亡のリスクの関係
(Eur Heart J. 2021 Apr 14;42(15):1499-1511.)
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表2 労働における身体活動レベルとMACEおよび死亡のリスクの関係
表2 労働における身体活動レベルとMACEおよび死亡のリスクの関係
(Eur Heart J. 2021 Apr 14;42(15):1499-1511.)
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 生活習慣や、健康状態、生活状況、社会経済的特性に基づいて対象者を細かく層別化し、同様の比較を行いましたが、結果は一貫していました。

 著者らは、余暇時間の運動と肉体労働のレベルの間に、相乗効果や相加効果などが存在するかどうかを調べるために、それぞれの運動レベルを組み合わせた分析を行いましたが、それらの間に有意な関係は見られませんでした。これは、肉体労働レベルとは関係なく、余暇時間の運動レベルが高いほど、MACEまたは死亡のリスクは低い傾向があること、一方で、余暇時間の運動レベルとは無関係に、肉体労働レベルが低いほど、MACEまたは死亡のリスクは低い傾向があることを意味します。

 以上の結果は、仕事の上での身体活動は、余暇時間に行う運動の代替にはならないこと、身体活動レベルが高い仕事をしている人も、日々十分に休息でき、休日には活発に運動できるような労働環境を整えることが、国民の健康を守るために大いに役立つ可能性を示唆しました。

 論文は、European Heart Journal誌2021年4月14日号に掲載されています(*2)。

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday(グッデイ)2021年9月16日掲載]情報は掲載時点のものです。

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