日本人女性約16万人を対象にした大規模研究の解析結果から、閉経前では飲酒の頻度と飲酒量が乳がんのリスクと関係することが分かりました。酒ジャーナリストの葉石かおりさんは、酒好き女性を代表して、愛知県がんセンターのがん予防研究分野分野長の松尾恵太郎さんに、乳がんのリスクを上げないためにはどのようにお酒を飲めばいいのか、またお勧めのつまみはあるのかなど、話を伺いました。

 閉経前の女性は、飲酒頻度や飲酒量が増えるほど、乳がんの罹患リスクが上がる。

 前回「日本人女性の「飲酒」と「乳がん」の関係、16万人のデータから判明!」の記事で、愛知県がんセンターなどが公表した、日本人女性約16万人を対象にした大規模研究の解析結果を紹介した。一方で、閉経後では飲酒と乳がんのリスクに有意な関係が見られなかったという。

 愛知県がんセンターのがん予防研究分野分野長の松尾恵太郎さんは、「一般にがんというと、高齢になると罹患率が高くなるものが多いです。その中でも乳がんは、比較的若いうちから罹患率が上がるがんだといえます」と話す。

 全国がん登録罹患データによると、乳がんの年齢階級別罹患率(2018年)は、下のグラフのようになっている。

乳がん年齢階級別罹患率(2018年)
乳がん年齢階級別罹患率(2018年)
(出典:全国がん登録罹患データ)

 日本では、平均で50歳すぎに閉経する人が多く、その前後合わせて10年、つまり45~55歳ぐらいが更年期にあたるといわれている。しかしこの乳がん罹患率のグラフを見ると、閉経前の40歳以降からグッと数が上昇していることが分かる。

 やはり女性特有の乳がんは怖いし、できることなら罹患したくない。しかし酒好きとしては、この結果を踏まえてもなお、酒を完全にやめることはできない。そこで「乳がんの予防」という観点から、どんなふうに酒を飲めばいいのかについて、引き続き愛知県がんセンターの松尾さんにお話を伺った。

酒の「量」と「頻度」、どちらかを妥協する

 先生、大規模研究の解析結果で、乳がんと飲酒の関係を知ってもなお、お酒はやめられません(涙)。

 「私もお酒が好きな人の気持ちが分かるので、『お酒をやめなさい』とは言いません(笑)。繰り返しになりますが、閉経前の女性の場合、いずれもまったくお酒を飲まない人に比べ、週5日以上飲む人は乳がんの罹患リスクが1.37倍に上がり、飲酒量については1日に23g(純アルコール換算)以上飲む人のリスクが1.74倍になる、という結果になりました。これを踏まえ、『お酒は乳がんのリスクファクターになる』ということを意識して飲むことが大切です」(松尾さん)

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