高血圧や糖尿病が原因で起こる夜間多尿も
このほかにも、高血圧や糖尿病といった生活習慣病や、その治療薬が夜間多尿を引き起こしていたり、脳梗塞や心筋梗塞の予防のために水分を必要以上に多く飲んでいることが夜間多尿につながっていることもある。
高血圧には、塩分をため込みやすいタイプとそうでないタイプがあり、日本人は前者が多い。私たちの体には、血液中の塩分(ナトリウム)の濃度を一定に保つ機能が備わっている。そのため、塩分を多くとった場合は、尿として体外に排出される。しかし、塩分をため込みやすいタイプの高血圧の人は、塩分を多くとると、昼間に作られる尿だけでは塩分を排出しきれない。すると、残った塩分を排出するために、夜間にも尿が作られることで、夜中にトイレに起きやすくなる。
糖尿病の場合は、血液中の糖が多くなるため、体は糖を尿として排出しようとする。すると、尿の量や回数が増えて脱水状態になりやすく、のどが渇いて水分を多く飲むことで、さらに尿の量が増えてしまう。
また、高血圧の治療によく使われる「カルシウム拮抗薬」という種類の薬や、糖尿病の「SGLT2阻害薬」という種類の薬も、夜間多尿を引き起こすことがある。
高血圧や糖尿病の持病があり、夜間頻尿・夜間多尿もある場合には、まずはかかりつけ医に相談してみるといいだろう。
夜間多尿の原因
- 抗利尿ホルモンの減少
夜間に作られる尿の量が増えてしまう - 心臓のポンプ機能の低下
血液の循環が悪くなり、下半身にたまった水分(むくみ)が夜間に尿として出てくる - 高血圧や糖尿病、およびその治療薬の一部
- 水分のとりすぎ
前立腺肥大症や過活動膀胱の一症状として夜間頻尿が表れる
2つ目の「蓄尿障害」は、膀胱にうまく尿がためられなくなる現象のこと。「蓄尿障害」も、加齢によって誰にでも起こり得る現象だ。腎臓で作られた尿は、膀胱にいったんためられる。加齢によって膀胱の筋肉が衰え、しなやかさが失われると、膀胱はあまり広がらなくなってしまう。その結果、ためられる尿の量が少なくなり、尿意を感じやすくなるのだ。
中高年男性に多い前立腺肥大症でも、蓄尿障害が起こる。「男性の場合は40~50代頃から前立腺が肥大してきて、尿が出にくい、尿の回数が多い、トイレに行く前に尿が漏れてしまうといった症状が出てきます。そうした症状の1つとして、夜間頻尿を訴える人がいます」(吉田さん)
夜間頻尿だけでなく、我慢できないほどの強い尿意を感じることがあったり、昼間のトイレも近かったりする場合は、過活動膀胱が原因になっている可能性もある。過活動膀胱は、膀胱や排尿に関する筋肉の衰えなどが原因で、少量の尿がたまった状態でも膀胱が過度に収縮して尿意を感じてしまう病気だ。男女ともに40代頃から起こってきて、加齢とともに増えてくる。
加齢や睡眠の病気で眠りが浅く、尿意で目覚めたと勘違いする
夜間頻尿の3つ目の原因が、「睡眠障害」だ。年齢を重ねてくると誰でも、睡眠はある程度、浅くなったり、短くなったりする。日中の活動量が減ったり、睡眠に関するホルモンの分泌量が低下したりするためだ。睡眠が浅いために夜中に目が覚めて、「尿意を感じて目が覚めた」と勘違いしているケースも見受けられるという。
加齢以外にも「睡眠障害」を起こす病気はあり、それらが原因で夜中に何度も目が覚め、トイレに行くことで結果として「夜間頻尿」になってしまうこともある。
「例えば、いびきをかきながら呼吸が一時的に止まってしまう『睡眠時無呼吸症候群』、脚にむずむずするような不快な感覚が生じる『むずむず脚症候群』、睡眠中に足の指や足首、膝などが勝手に動いてしまう『周期性四肢運動障害』といった病気は、夜間頻尿のリスク因子に挙げられます。これらの病気が夜間頻尿を引き起こしている場合には、その病気の治療をすることで、夜間の眠りが改善されて、夜間頻尿もよくなることがあります」(吉田さん)
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