歯科定期受診者の動脈硬化リスクは低い

 分析対象となった602人のうち100人が、症状がなくても定期的に歯科を受診していました。

 歯科検診では、306人が残存歯数20本以上であることが確認され、149人は歯槽骨欠損の程度が軽く(最低四分位群)、43人は歯周炎なしまたは軽症と判定されました。

 アテローム性動脈硬化症と判定されたのは117人でした。動脈硬化と見なされた人たちは、そうでない人たちに比べ、年齢が高く、男性が多く、収縮期血圧(上の血圧)が高く、高血圧の薬を使用している人が多く、肥満者は少ない傾向が見られました。

 定期的に歯科を受診していた人の割合は、動脈硬化があった人たちでは10.3%、動脈硬化がなかったグループでは18.1%で、動脈硬化がなかった人たちのほうが統計学的に有意に高くなっていました。動脈硬化がなかった人たちのほうが、歯周炎の重症度は低く、残存歯数は有意に多いことも分かりました。歯槽骨欠損の程度は両群に差はありませんでした。

 分析結果に影響を及ぼす可能性のある要因として、BMI(体格指数)、糖尿病や脂質異常症の存在、血圧の薬の使用、収縮期血圧、拡張期血圧(下の血圧)、喫煙習慣、飲酒習慣、学歴に関する情報を得て、それらを考慮して分析したところ、定期的に歯科を受診していない人がアテローム性動脈硬化症と判定される確率は、定期的に受診している人の2.16倍でした。

 一方で、歯槽骨欠損の評価で最低四分位群に分類された人たちと他の群に分類された人たちの、アテローム性動脈硬化症と判定される確率に差はありませんでした。

 歯周炎がない、または軽症の人々と比較すると、重症の患者がアテローム性動脈硬化症と判定される確率は有意に高く、4.26倍になっていました。

 残存歯数で層別化した分析では、20本以上残っている人と比較して、10~19本だった人がアテローム性動脈硬化症と判定される確率は1.77倍でしたが、1~9本の人との差は有意ではありませんでした。

 得られた結果は、定期的に歯科を受診しないことと、重症の歯周炎の存在が、アテローム性動脈硬化症の存在と関係していることを示唆しました。

大西淳子(おおにし じゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにし じゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday(グッデイ)2022年8月17日掲載]情報は掲載時点のものです。

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