
酔っぱらっている方を中心に、面白おかしくインタビューしているバラエティー番組を見て、ふと気づいた。
「歯が欠損している人が多い」と。
単なる偶然かと思ったが、筆者の周囲の大酒飲みを見渡してみると、口腔環境が悪い人が結構な数でいる。
還暦を前にすでに残存歯が6本しかなく、部分入れ歯になった人もいれば、重度の歯周病で歯が抜け落ちてしまった人もいる。5年以上歯科医院に行っておらず、虫歯や歯石を放置しっぱなしの人もザラだ。

筆者の場合は、虫歯になりやすいということが経験から分かっているので、3カ月に一度は歯科医院に通っている。
いや、ちょっと待って。もしや「虫歯になりやすい」というのは、日常的な飲酒が影響しているのではないだろうか?
そういえば、深酒をした際、歯も磨かず化粧もしたまま寝てしまったことがあった。そんなことが影響して、虫歯になりやすかったりするのだろうか?
口腔環境が気になるお年頃の酒飲みのためにも、ここは真意を確かめておく必要がある。飲酒と口腔環境について詳しい、久里浜医療センターの歯科医長で歯科医師の井上裕之氏にお話を伺った。
アルコール依存症の人は虫歯や歯周病のリスクが高い
先生、お酒を日常的に大量飲酒している人は、口腔環境が悪い傾向があるのでしょうか?
「当院に診察に訪れるアルコール依存症(使用障害)の患者さんを診ていると、決して口腔環境がいいとは言えません。歯が全部で28本ある中で、虫歯が20本あるような人もいます。25~70歳以上のアルコール依存症の方437人を対象に調べたデータで、平均して5.7本の虫歯があるという報告もあります。もちろんこれはアルコール依存症の方に限った話ですが、お酒をよく飲む人も、同様に口腔環境に悪影響があると考えられます」(井上氏)
平均で5.7本といったら結構な数ではないか。しかも、この報告では、40~50代に限ると虫歯の平均は7本近くになるという。やはり大量飲酒は、口腔環境を悪化させるのだろう。それはいったいなぜだろうか?
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