新型コロナウイルスに感染すると、その後に糖尿病を発症するリスクが高まることが、米国の退役軍人の診療データベースを利用した追跡研究(*1)で明らかになりました。コロナ感染後1年間の糖尿病の新規発症リスクは、感染しなかった人の1.4倍、コロナで入院した人では2.7倍になっていました。

新型コロナに感染した後は糖尿病の発症リスクが上昇することが分かりました。(写真=PIXTA)
新型コロナに感染した後は糖尿病の発症リスクが上昇することが分かりました。(写真=PIXTA)

コロナに感染した米国の18万1280人を1年間追跡

 新型コロナウイルス感染症の後遺症に関する報告が相次いでいますが、その中には糖尿病も含まれています。しかし、後遺症としての糖尿病の発症率などに関する分析は十分に行われていませんでした。そこで米国の研究者たちは、新型コロナウイルス感染後1年間の糖尿病の新規発症リスクを調べることにしました。

 著者らは、米国の退役軍人の診療データベースを利用して、2020年3月1日から2021年9月30日までの期間に新型コロナウイルス感染陽性が判明し、それから30日後まで生存していた18万1280人の情報を取得しました。対照群として、同じ期間に新型コロナウイルスに感染していなかった人たちを411万8441人選出しました(同時期の対照群)。また、新型コロナウイルス流行前の2018年3月1日から2019年9月30日までに退役軍人医療センターを受診した428万6911人も選出しました(過去の対照群)。

 追跡を開始する前の時点で、それら3群の中に糖尿病患者はいませんでした。追跡期間の中央値は3群ともに352日になりました。新型コロナに感染した18万1280人において、「追跡期間中の糖尿病発症」、「30日以上の糖尿病治療薬(血糖降下薬)の使用」、および「糖尿病発症と30日以上の血糖降下薬使用のいずれかまたは両方」の、計3つのリスクを、2つの対照群と比較しました。

 結果に影響を及ぼす可能性のある要因として、年齢、人種、性別、居住地域の社会経済的な状況、BMI(肥満の程度)、喫煙習慣、施設入所歴、医療利用状況などに関する情報や、がん、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)、慢性肺疾患、認知症、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症、末梢血管疾患などの持病の有無に関する情報、腎機能、HbA1c、血圧といった検査結果、および、ステロイドを含む処方薬の使用に関する情報を得て、それらを考慮した分析を行いました。

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