:実はどちらも同じ「60 歳」の方の脳なんです。

:なんですと……?

:同じ年齢でもこれだけ差が出ます。私はこれまで、膨大な数の脳のMRIを研究のために撮っていますが、被験者の方の脳が年相応なのか、若々しい脳なのか、もしくは実際の年齢よりも老けた脳なのかは、その方がMRI室に入ってきた段階で分かってしまうんです。

:どういうことですか?

:脳が若々しい方は、年を取っていても身なりがきちんと整っていて、動作もキビキビしていて、受け答えもしっかりしています。実際の年齢より老けた脳の方は、それと全く逆で、おしゃれにもあまり気を使っていません。こうやって「見た目」から脳の状態がある程度予測できてしまうんです。

:外見にも表れてしまうということですか! 驚きました。

脳を若々しく保つためにできることトップ3

:60~70代の方が認知症を予防するためにできることと、40~50代の方が脳のパフォーマンスをアップするためにできることは、基本的に同じです。

:何をやればいいのかぜひ教えてください!

:まず、脳の健康維持や認知症の予防のために重要なこととして、特にエビデンス(科学的証拠)のレベルが高いものが3つあります。「脳を若々しく保つためにやるといいことトップ3」だと思ってください。それが「運動」「趣味・好奇心」「コミュニケーション(社会との関わり)」です。

 そして、その次にエビデンスレベルが高いものが、「食事」「睡眠」「幸福感」の3つです。

<span class="fontBold">瀧靖之(たき・やすゆき)</span><br> 東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センターおよび加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授<br> 医師。医学博士。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。10万部を超えたベストセラー『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など著書多数。
瀧靖之(たき・やすゆき)
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センターおよび加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授
医師。医学博士。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。10万部を超えたベストセラー『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など著書多数。

:最初の3つのほうが高い効果が期待できるということですか? とりあえずその3 つからやればいいわけですね。

:基本的にはそうです。ただ、その次の3つについても、これからさらに研究が進んでエビデンスが積み重なっていく可能性はあります。ですから、この6 つのうち、できるものからやるというスタンスがよいのではと思います。

:なるほど。そして、トップ3に私の苦手な「運動」が入っていますね。

:運動は脳にとてもいいんですよ。専門的な話をすると、酸素をたっぷり取り込んで行うウオーキングやランニングなどの有酸素運動によって、脳内の血流が増え、それにより脳内で脳由来神経栄養因子(BDNF)、インスリン様成長因子(IGF-1)、といった特定の細胞の成長を促すホルモンが放出されます(*2)。

 BDNFが増えると海馬の神経新生が促進され(*3)、それにより記憶力の向上が期待できます。またIGF-1が増えると、神経伝達物質のセロトニンやBDNF自体の生成も促します(*4)。その結果、神経細胞同士の結合を高めたり、長期記憶の生成に関与したりするといわれています。

:難しくて頭に入ってこないのですが……。要するに運動すると脳の成長や維持に必要な物質が出てくるということですか?

:簡単にいえばそうです。そして、どれくらい運動するのがいいかというと、中年期における週2 回以上の運動は、認知症リスクを約40%下げることが明らかになった、という研究があります(*5)。特に遺伝的に認知症リスクの高い人に効果が顕著に見られたそうです。

*2 Cotman C.W. et al., Trends in Neurosciences, 30(9):464-72., 2007
*3 Erickson K.I. et al. Neuroscientist, 18(1):82-97., 2012
*4 Cotman C.W. et al., Trends in Neurosciences, 30(9):464-72., 2007
*5  Rovio S. et al., The Lancet Neurology, 4(11):705-11., 2005

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