ほぼコレステロールだけでできる胆石は白に近くなるが、ビリルビンが2割程度含まれる「混合石」になると茶褐色になるという。また、コレステロールとビリルビンが時間をたがえそれぞれ層を成して固まった「混成石」もある。

 胆石にこんなに種類があるとは、恥ずかしながら全く知らなかった。しかし、気になるのが「コレステロール」という言葉。やはりコレステロールの多い酒のつまみが胆石の原因になっているのでは……?

 「かつては、コレステロールが多い卵や筋子を食べると血中や胆汁のコレステロールが増えるといわれていましたが、そうではないことが分かってきました。というのも、体内のコレステロールのうち、食事由来なのは3分の1程度で、残りの3分の2は体内で合成されているのです。そのため、コレステロールの多い食品をとっても、胆汁内のコレステロール濃度はそれほど影響を受けないのです」(森氏)

 卵や筋子を食べてもあまり影響を受けないというのはうれしいが、別の食品がトリガーとなってコレステロール胆石のリスクを上げるという。

 「それは、でんぷん質(*1)を多く含む即席めんです。そのため、白に近いコレステロール胆石を別名『カップラーメン胆石』などと呼んだりします。でんぷん質を過剰に摂取すると、詳しいメカニズムは分かっていないのですが、血液中のコレステロール値が下がり、肝臓で『コレステロールを作りなさい』というスイッチが入ります。肝臓で生成されたコレステロールは血液だけでなく胆汁にも流れ込み、その結果として、胆汁内のコレステロール濃度が上がり、胆石ができやすくなるのです」(森氏)

*1 食物に含まれる「炭水化物」のうち、食物繊維を除いたものを「糖質」といい、糖質はさらに、ブドウ糖や果糖などの「糖類」と、糖類以外の糖質に分けられる。この糖類以外の糖質のほとんどが「でんぷん質」であり、糖類がたくさんくっついて鎖状になったものだ。即席めんに使われるでんぷん質は、さつまいもなどを原材料として作られる。

アルコールは胆石の直接的な原因ではない

 即席めんばかり食べるような偏った食事をしているとコレステロール胆石ができやすくなることが分かった。ほかに胆石ができやすくなる原因はあるのだろうか。

 「1つは、ダイエットなどで食事の回数が極端に少なくなること。胆のうは食事をするときに収縮し、ためられた胆汁を分泌します。しかし、食べ物が入ってこないと胆のうが収縮する回数が減り、胆のう内に胆汁が長くとどまることで、コレステロール胆石ができやすくなります。もう1つは経口避妊薬(ピル)です。薬に含まれる女性ホルモン(エストロゲン)が、胆汁内のコレステロールを増やし、胆石を誘引すると考えられています。ほかにも、肥満や加齢なども関係しています」(森氏)

 それでは、胆石ができやすいのはどのような人だろうか。

 「昔は、胆石ができやすい人の条件として、Fatty(肥満)、Forty(40代)、Female(女性)、Fecund(多産)、Fair(白人)の頭文字を取って『5F』などといわれていました。幾分、語呂合わせのようなものですが。現在の日本では、男性の罹患率が高くなっています。特に60代以降の男性に多い傾向にあります」(森氏)

 「なるほど」と深くうなずきつつ、ふと肝心なことに気づく。それは、胆石になりやすい人の特徴として、「酒をよく飲む」が入っていないことだ。

 「アルコールは、胆石の直接的な原因にはなりません。ただし、お酒の飲み過ぎ、おつまみのとりすぎによる肥満や、脂肪肝によって、胆汁内のコレステロールが増え、胆石を引き起こすこともあります。また、お酒を飲んだ翌日、ひどい二日酔いになって食事をとらない人がいますが、それも胆石を招く可能性があります。食事をとらないことで、胆のうの収縮回数が減ってしまうからです」(森氏)

 なるほど。酒は直接の原因にはならないが、間接的な原因になる可能性はあるようだ。言われてみると、胆のう摘出手術をした2人は、やや肥満気味。締めに食べたラーメンの写真をSNSによく上げていた。

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