働く人のストレス状況はますます深刻になっています。コロナ禍で働き方が多様になったものの、社員が孤立化し、一人で多くの仕事を抱えてメンタル不調に陥ることも。どのように対策すればいいでしょうか? 働く人のメンタルヘルスに関連した「お悩み」について産業医が回答する本連載。今回は精神科医・産業医の奥田弘美先生が、「リモートワークが原因で3人の若手社員が次々メンタル不調になった」というケースを取り上げます。
リモートワークが原因でメンタル不調になる人が続出している(写真はイメージ=PIXTA)
リモートワークが原因でメンタル不調になる人が続出している(写真はイメージ=PIXTA)

今回の「お悩み」
リモートワークで若手3人が次々メンタル不調に

 大手メディア企業の関連会社で労務管理を担当しています。社員は50人未満。産業医はいません。

 コロナ禍では、親会社の方針に沿って感染対策を実施し、リモートワークをメインにして業務を行ってきました。

 ところがこの1年ほどで、立て続けに3人の若手社員がメンタル不調になって休職しました。直属の上司たちからの報告によると、その理由が「リモートワークが原因だ」というのです。

 一部の社員からは、「そろそろ出社に戻していったほうが良いのでは?」という声も出ています。

 社員に良かれと思って、リモートワーク中心にしてきたのに、出社率をもっと高めたほうがいいのでしょうか? リモートワークを喜ぶ社員もいるため、どうしたらいいのか迷っています。

※取材などを基に得た情報から創作した「お悩み」です。また、このコーナーでは「お悩み」を募集しております。詳しくはこちら

なぜリモートだとコミュニケーションが希薄化するのか

 コロナ禍においては感染対策が最優先され、リモートワークが全面的に推奨されていました。そのため、リモートワークのメリットばかりが強調され、負の側面についてはあえて議論が避けられていたように思います。

 しかし、嘱託の産業医としてさまざまな会社で社員と面談していると、確かに「リモートワークが原因でメンタル不調になる社員」がまれではないことを実感しています。

 そこで、筆者が遭遇したケースを交えながら、リモートワークのデメリットについて挙げてみたいと思います。

デメリットその1:コミュニケーションが希薄化し、信頼関係が深まらない

 リモートワークにおけるウェブ会議でのコミュニケーションは、パソコン上に映った上半身だけとの会話となり、相手の醸(かも)し出す雰囲気を感じ取ることが難しくなります。

 さらに、多人数のウェブ会議ともなると、発言している人だけがクローズアップされるため、その他大勢の態度や顔色をキャッチすることができません。

 つまり対面でのコミュニケーションに比べると、リモートでの会話は、相手から得られる情報量が圧倒的に少なくなってしまうのです。

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