「思い直し」の技術で気持ちはラクになる

Dr. 五十嵐 前回、「認知行動療法」と、その具体的な手法の「認知再構成法」についてお伝えしましたが、初めてこの言葉に出合った読者の皆さんには、わかりにくいかもしれません。改めて「認知再構成法」とは、どういうものでしょうか。

伊藤CPP 認知再構成法は、いわば「思い直し」の技術です。

 実は、私たちは日常の中で、この「思い直し」を普通にやっています。例えば、右の道に進もうとしていたけれども、左の道の方が近道だと気づいて進路を変える、というようなことは、よくありますよね。

 仕事の場面でも、失敗してしまった時に「ああ、自分はダメな人間だ」と考え、ひどく落ち込んでいたけれども、「いやいや、世の中に失敗しない人間なんていない。誰にだって失敗経験はあるものだ。今回の経験を生かして、同じことを繰り返さないようにすればいいのだ」と思い直し、気持ちがラクになった…というような具合です。

 こうした「思い直し」を、あえて意図的に丁寧にやってみましょう、というのが認知再構成法です。

失敗して落ち込んでも、思い直すことができる。私たちは日常の中で、この「思い直し」を普通にやっているという。(写真はイメージ=123RF)
失敗して落ち込んでも、思い直すことができる。私たちは日常の中で、この「思い直し」を普通にやっているという。(写真はイメージ=123RF)

狭い視野を広げ、別の視点や考え方を探す

伊藤CPP 先ほどの「仕事で失敗した」という事例で言えば「視点を変えてみては?」と促します。

 例えば、

  • 過去に、同じように失敗した経験はないか。その時はどうしたか?
    ⇒ 自分の過去の経験に似たケースでの対応を参考にする。
  • 親しい友人が、いまの自分と同じ状況にいたら、その友人に何と声をかけるか?
    ⇒ 他人に置き換えて、どういう助言が有効かを考えると冷静な検討につながりやすい。
  • あなたの上司が、この状況になった時、上司はどうするだろうか?
    ⇒ 上司や先輩など、あなたよりも経験豊かな人ならどう対処するかを想像して考える。

 …というように、別の視点や考え方がないかを探すことで対処法を再検討します

Dr. 五十嵐 なるほど。先のケースでは、失敗を悔やみ、自分はダメな人間だと「認知=考え」たけれども、世の中に失敗しない人間なんていないのだと「再構成=直した」ということですね。

伊藤CPP はい。この認知再構成法は、これまでは専門のカウンセラーとの対話の中で行うのがよいと考えられてきましたが、近年では、この認知再構成法を含む、認知行動療法のワークブックがいくつも出版されているので、自分自身で取り組めます。

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