現代を生きる私たちにとって「ストレス対策」は、もはや自分を守るための必須事項と言っていいでしょう。この連載では、ストレス対策分野の専門家の方々に具体的な対応策をお聞きしてお伝えしています。今回は、前回(「しっかりストレス対策したいならコレ 様々な医療現場で活用中の「認知行動療法」」)に引き続き、この分野の第一人者であるセラピスト、公認心理師の伊藤絵美先生との対談から「認知再構成法」「マインドフルネス」「スキーマ療法」について紹介します。

 ストレスを抱えた数多くの患者さんたちにカウンセリングを行っている、セラピストの伊藤絵美先生は「ストレスを感じたら放置せずに、できれば、その日のうちに意図的にストレス対策を行う方が良い」と明言します。放置しておくと、自分では気づかないうちにストレスをため込むことになって、苦しくなり、体調を崩しかねないからです。

ストレスは自分で気づかない限り、ケアできない

Dr. 五十嵐 ストレスに対して、早期に対策するコツは何でしょうか。

伊藤絵美・公認心理師(以下、伊藤CPP=Certified Public Psychologist) まず何と言っても「自分がストレスを感じたと気づくこと」です。そもそも、自分が気づいていないとケアできませんから。

伊藤絵美さんの著書の1つ『<a href="https://www.amazon.co.jp/dp/4794971818/" target="_blank" rel="noopener">セルフケアの道具箱</a>』
伊藤絵美さんの著書の1つ『セルフケアの道具箱

 そのためには、苦手な相手との会話などでストレスを感じた時に、自分にどういう反応が表れたのかを思い出してみることです。この反応を「ストレス反応」と言い、実は個人差が大きくあります。

 例えば「その場から逃げ出したい!と思った」「顔が引きつった」など。その時、どんな考えが浮かび、どういう気持ちになり、身体にどんな反応が表れたか。その結果、どういう行動を取ったか。実は、こうした自分の「ストレス反応」を知ることが自分を守るためには、とても大事です。

 なぜなら、「ストレスを感じると自分はこういう反応が出る」と自分の特徴を知っていれば、「ストレスを感じた」と気づくことができ、また、その影響の度合いを測るバロメーターになるからです。

Dr. 五十嵐 なるほど。では、そのための自分の観察と、それを継続するコツはありますか?

軽い段階でストレスに気づくには自分を観察すること

伊藤CPP はい。四六時中、自分を観察するわけにはいきませんが、「定点観測」のように時間や場所を決めるという手があります。例えば毎日の通勤電車の中や、昼食時など、時間や場所を決めて、その時だけは必ず「自分の状態を観察する」という課題を設定しておくという方法です。

Dr. 五十嵐 それを続けていけば、自分を観察してストレスチェックをするスキルが上がり、通常と異なる反応が表れたら察知できそうです。

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