うつ病などの気分障害の患者数は全国で100万人を超えており、ビジネスパーソンにとって大きな健康問題です。この連載では、東京のビジネス街で精神科クリニックを開業する五十嵐良雄医師が、多くの患者さんを診た経験から、ビジネスパーソンが陥りがちなメンタルの罠(わな)についてアドバイスします。
ストレスの原因は人によってさまざま。まずはストレスの原因を見極めることが大事だ。写真はイメージ=123RF
ストレスの原因は人によってさまざま。まずはストレスの原因を見極めることが大事だ。写真はイメージ=123RF

 現代社会で働く場面で「ストレス」を感じることは、もはや日常茶飯事です。そして、ストレスを長く受けると「胃が痛みだす」「食欲が減退する」「眠れなくなる」といった、身体的なストレス反応が表れ始めます。この状態が長く続けば、「気づいた時には胃に穴が開いていた」などと、さらに体調は悪化しかねません。

 しかも、ストレスのない仕事、職場などはありません。仕事や職場にストレスがつきものであるならば、平時から自分にとって効果的な予防線を張っておくことは大切なことであり、自分なりのストレス対策法を考えて、備えておくことは、もはや必須のビジネススキルです。

 中国・春秋時代の兵法書「孫子」には、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という有名な兵法上の奥義があります。

 まずは、自分の敵を知ることです。仕事の場面にはストレスを引き起こす原因がたくさん潜んでいます。では、どういう環境があなたにストレスを与えているのでしょうか。おそらくそれは一つではないでしょう。

 苦手に感じること、不快に感じること、できれば避けて通りたいと思っていること…。どういう環境、どういう状況、どういう人があなたにストレスをもたらすのか、あなたが感じるストレスの源を明確にしましょう。

 そして次に、自分にとって、ストレスを発散し解消するのにどういう方法が効果的か、どのような状況が最もリラックスできるかという、自分なりのストレス解消方法を準備しておくことです。

 今回から何回かに分けて、現代のビジネスパーソンに必要なストレス対策についてご紹介していきます。初回は、自分は仕事の場面や職場でどういうことをストレスに感じるのか、についてです。ではまず、あなたの仕事上のストレス要因を読み解くことから始めます。

自分を守るために原因を知り、対処法・予防法を身につける

 ここでは、わたしのクリニック、メディカルケア虎ノ門で行われている「リワークプログラム」の中で実際に行っているストレス対策方法をご紹介します。

 リワークプログラムは、うつと診断されて会社を休職したビジネスパーソンの皆さんが、復職して同じような環境に戻っても再休職することなく働き続けられるよう、復職前に一定の期間クリニックに通ってもらい、再休職しないための、さまざまなノウハウを身につけるプログラムです。

 いわば、働き続けていくために「うつから身を守るためのプログラム」とも言えるでしょう。当クリニックではこのプログラムを2005年に導入し、2021年5月までに1700人が職場に復職しています。

 そして、このプログラムの重要な内容の一つが「セルフケア能力の強化」です。これは自分で自分をケアして、健康な状態を保つ能力です。うつによる休職から職場に復帰してストレスに再びさらされても、気分や体調の安定を保ち、再休職せずに働き続けられることを目的としています。

 そこで、ここでは、実際に当クリニックのリワークプログラムで行われている「ストレスマネジメント」の一部を紹介します。この内容が皆さんの役に立つのではないかと考えています。

続きを読む 2/4 まずは「敵を知る」。皆が同じことにストレスを感じるわけではない

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