
前回は、「歩く、動く」ことが死亡リスクや認知症、がんリスク低下につながるという研究結果について紹介した。
「どの年代であっても、肥満の人もそうでない人にとっても、体を動かすことは重要です。なかでも、老化とともに減っていく筋肉の量を維持し、かつ、脂肪筋とならないように筋肉の質を維持していくことがアンチエイジングにつながります」と、順天堂大学大学院 代謝内分泌内科学・スポーツ医学・スポートロジーの田村好史さんは言う。
田村さんは、筋肉を“質”と“量”という両面で考えることを提案する。
「筋肉の質を高めるのが、有酸素運動。量を増やすのが、レジスタンス運動(筋トレ)です」(田村さん)
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筋肉のインスリン感受性を高める。メタボ改善のためには、有酸素運動
有酸素運動とは、体内で酸素を使い、糖や脂肪を燃やしながら行う運動。
早歩き、水泳、自転車に乗ることなどが代表的。
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筋肉の量を増やし、筋力を高める。フレイル予防のためには、レジスタンス運動
筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動。筋トレが代表的。
主に筋肉量や筋力をつける目的で行う。基礎代謝量を高め、エネルギーを消費しやすい体を作る。
いずれも実践していただきたい重要な運動だが、多くの人が取りかかりやすいと思うのはウォーキングなどの有酸素運動だろう。とはいえ、「歩くぞ!」と思い立ったものの、ついついおっくうになって三日坊主になりがち……。そこで、田村さんは、「スマホなどで歩数を測る」ことを勧める。
「患者さんがいかに積極的に治療に関わってくれるか、という“アドヒアランス”の効果を確かめた研究があります。この研究によると、『毎日30~60分体を動かしましょう』と言うよりも『今よりも1日あたり3000歩、歩数を増やしましょう』と指導したほうが、実際の歩数が増え、血糖値の指標であるHbA1cも下がったのです」と言う。

成人の場合、10分歩くと1000歩の歩数に匹敵する。「3000歩増やそう」より「30~60分歩こう」のほうが多く歩いてもよいはず。なのに、どうして歩数を指導した群だけこのように効果が表れたのだろう。
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