PPIを使用したタイミングに基づいて、PPI使用者を以下のように分けました。

現在使用者:急性腎障害の診断日より前の30日間に使用していた人

最近の使用者:急性腎障害の診断日の31日前~90日前の期間に使用していた人

過去の使用者:急性腎障害の診断日の91日以上前から研究対象に組み入れた日までの期間に使用していた人

PPIの現在使用者の腎障害リスクは、過去の使用者の2.8倍

 分析結果に影響を及ぼす可能性のある因子(腎毒性を持つ薬剤の使用の有無など)を考慮した上で分析したところ、PPIの「現在使用者」の急性腎障害リスクは、「過去の使用者」の2.79倍になっていました。一方、「最近の使用者」には、過去の使用者と比較した急性腎障害リスクの上昇は見られませんでした。

 次に、PPIの現在使用者で、非ステロイド性抗炎症薬または抗菌薬を併用していた患者の急性腎障害発症リスクを、それぞれを併用していなかったPPI現在使用者と比較した結果を表1にまとめました。結果に影響を与える可能性のある因子で調整しても、PPIと非ステロイド性抗炎症薬、セファロスポリン系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬を併用していた患者の急性腎障害リスクは有意な上昇を示しました(それぞれ3.12倍、1.88倍、2.35倍)。

表1 PPIの現在使用者の急性腎障害発症リスク
表1 PPIの現在使用者の急性腎障害発症リスク
(Ikuta K, et al. BMJ Open. 2021 Feb 15;11(2):e041543.)
[画像のクリックで拡大表示]

 急性腎障害の絶対リスクも、それらの併用群では大きく上昇していました(表2)。

表2 急性腎障害の絶対リスク(1万人-年当たりの未調整発症率)
表2 急性腎障害の絶対リスク(1万人-年当たりの未調整発症率)
(Ikuta K, et al. BMJ Open. 2021 Feb 15;11(2):e041543.)

 以上の結果は、PPIと非ステロイド性抗炎症薬の併用と、PPIとセファロスポリン系抗菌薬またはフルオロキノロン系抗菌薬の併用が、急性腎障害リスクの上昇に関係することを示しました。非ステロイド性抗炎症薬は薬局で購入できることから、PPIを使用している人が鎮痛薬や解熱薬を使用する際には、注意が必要と考えられます。

 論文は、2021年2月15日付の「BMJ Open」に掲載されています(*1)。

(図版制作:増田真一)

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday(グッデイ)2021年5月26日掲載]情報は掲載時点のものです。

日経Gooday(グッデイ)は、日本経済新聞社が運営する、健康・医療に関する総合サイトです。「からだにいいこと、毎日プラス」をキャッチフレーズに、セルフケアを中心とした最新情報・メソッドのほか、検索・辞書機能も提供します。

この記事はシリーズ「日経Gooday」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。