飲酒量とアルツハイマー病のリスクには男女差があり、女性では少量飲酒の人でアルツハイマー病のリスクが低下し、飲酒量が増えても有意なリスク上昇は見られないことが、複数の研究のデータを統合・解析した研究(*1)で示されました。男性では、飲酒量が多い人(週にビールの350mL缶11本弱)のアルツハイマー病リスクは非飲酒者に比べ有意に高く、少量飲酒者におけるリスク低下も見られませんでした。

少量の飲酒はアルツハイマー病のリスクを下げるのか?
これまでに行われた研究で、アルコールの過剰摂取はアルツハイマー病の危険因子であることが示されています。一方で、適度な飲酒を習慣としている人のアルツハイマー病リスクが低いことを示したエビデンスもあり、少量飲酒の保護的な効果については、議論が続いていました。
中国吉林医学院附属病院のChunxiang Xie氏らは、これまでに行われた研究は、飲酒量の定義、アルコール飲料の種類、追跡期間などがそれぞれ異なっているために、結果に違いが出てきた可能性があると考えました。そこで、既に報告されている質の高い研究論文を複数選出し、データを統合して分析することにより、飲酒量とアルツハイマー病リスクの関係を検討しました。
文献データベースに2019年9月1日までに登録されていた研究の中から、非飲酒者と比較した飲酒者のアルツハイマー病リスクや、飲酒量とアルツハイマー病リスクの関係について報告していた13件の観察研究を選びました。2件は北米、8件は欧州、3件はアジアで行われていました。すべての研究がアルツハイマー病の診断に用いられた方法を記載しており、分析では年齢と性別を考慮していました。多くの研究では学歴と喫煙習慣も考慮しており、研究の質はおおむね高いと判断されました。
13件の研究のデータを統合して分析したところ、非飲酒者に比べ、飲酒者のアルツハイマー病リスクは32%低く、この差は統計学的に有意であることが明らかになりました。
続いて、アルコール飲料の種類や性別などに基づいて対象者をサブグループに分けて、同様に分析しました。アルコール飲料の種類として、ワイン、ビール、蒸留酒の3種類のいずれかを主に摂取する人を対象に分析したところ、ワインを摂取する人のアルツハイマー病リスクは、非飲酒者と比べて29%低くなっていました。一方で、ビールと蒸留酒については、アルツハイマー病リスクとの関係は有意になりませんでした。
男女別に分析すると、非飲酒者に比べ、男性飲酒者のアルツハイマー病リスクは31%、女性では34%低いことを示す統計学的に有意な結果が得られました。
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