20歳から中高年期までに体重が大きく増加した人は、その後、大腸がんの前兆といえる大腸腺腫(大腸ポリープのうち、大腸がんになる可能性がある腺腫性のポリープ)が見つかるリスクが高いことが、米国で行われた研究(*1)によって示されました。20歳時点ではBMI(*2)が25以上あっても、中高年期までに体重が減った人では、大腸腺腫を発症するリスクは低いことも示されました。

体重が減少すれば大腸腺腫を発症するリスクは低下するのか
肥満が大腸がんと大腸腺腫の危険因子であることは既に示されていましたが、これまでに行われた研究の多くが、ある一点で測定した体重またはBMIと、大腸腺腫の関係を調べていました。体重の変化と大腸腺腫の関係について検討していた研究もありましたが、ほとんどが体重増加との関係しか調べていませんでした。
体重が減少すれば、大腸腺腫を発症するリスクは低下するのでしょうか。大腸がん予防のための対策を考える場合にそうした情報は欠かせないと考えた米メリーランド大学などの研究者たちは、大規模な臨床試験PLCOに参加して大腸がん検診を受けた人々のデータを得て、分析しました。
PLCOは、55歳から74歳までの男女を登録して、前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんの検診を受けるグループ(介入群)と、受けないグループ(対照群)に割り付けて、それらのがんによる死亡のリスクを比較した無作為化試験です。大腸がんについては、試験に参加した時点と3年後または5年後に、軟性S状結腸内視鏡検査を行いました。この検査は、大腸がんが最も発生しやすいといわれる肛門から50~60cmまでの範囲を調べます。
今回は、介入群に割り付けられ、症状の有無とは関係なく大腸がん検査を2回受けていた成人を対象として、体重の変化と大腸腺腫の発生の関係を評価しました。分析対象者は、参加時点で一般的な質問と食習慣に関する質問に回答しており、がんの経験はなく、参加時点の大腸がん検診の結果は陰性でした。潰瘍性大腸炎やクローン病、家族性大腸腺腫症といった腸疾患の患者と、大腸ポリープ歴があると自己申告した人は除外しました。体重については、試験参加時点(55~74歳)に加え、20歳時点、50歳時点の体重を尋ねました。
3~5年後の2回目の検診で陽性になり、診断のための検査を受けて大腸腺腫であることが確定した発症者1053人(平均年齢は61.9歳、男性が67.1%)と、2回の検診も陰性だった非発症者1万6576人(62.1歳、55.3%)のデータを分析しました。
体重の変化については、推算で5年あたり0.5kg以上減少していた人は「体重減少」とし、減少幅が0.5kg未満または増加幅が1.0kg以下の人を「体重安定」としました。体重が増加した人については、5年あたりの増加幅が「1kg超~2kg以下」、「2kg超~3kg以下」、「3kg超」の3群に分類しました。
*2 BMI:Body Mass Index:体格指数=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)。日本肥満学会の基準ではBMIが25以上だと肥満に該当する。
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