浅部氏:そういうタイプの人がしばらくお酒を飲まないでいると、MEOSの酵素群がアルコールの代謝に使われなくなり、お酒に弱くなります。というか、お酒の強さが元に戻るんですね。

竹内:なるほど。「まん延防止等重点措置」が解除されて、久しぶりに飲み屋でお酒を飲んで、「あれ、お酒に弱くなっているぞ」と感じた人がいるのはそういうわけなのですね。

浅部氏:そうですね。お酒をあまり飲まない期間が2週間ぐらい続くと、MEOSの代謝経路が使われなくなって弱くなる、と考えるといいかもしれません。

葉石氏:弱くなっても、もう一度鍛えれば、また強くなるのでしょうか?

浅部氏:はい。その可能性は高いです。ただ、久しぶりに飲んで弱くなっているときに、無理にたくさん飲むのは危険なので気をつけたほうがいいですね。以前だったらこれぐらいの量は全然平気だったのにと思っても、すぐに酔いが回ってつぶれてしまう、ということにもなりかねませんから。

少量の飲酒でも病気のリスクが上がる

竹内:さて、「酒は百薬の長」と昔からよくいわれるように、ほどほどに飲む分には健康によく、長生きにつながると考えられていました。ところが、ここ数年、世界的にも研究が進み、「ほどほどに飲んでも病気のリスクが上がる」という研究報告が権威のある雑誌で公表されました。この「ほどほどに飲む場合のリスク」について考えたいと思います。

葉石氏:お酒が好きな人にとっては非常に耳が痛い話です。

竹内:2018年に雑誌『Lancet』に公開された論文では、まったく飲まないことが最も健康によいと結論付けています。また、2019年の東大の研究では、1日1合程度の飲酒を10年続けるだけでも、がんのリスクが5%上昇すると報告されています。しかも、食道がんのリスクは45%、喉頭がんは22%の上昇となっています。浅部さん、こうした研究結果は、どうとらえればいいのでしょうか?

浅部氏:特に問題になるのは、がんについてですね。アルコールに関してはかなり研究が蓄積されているので、ほどほどに飲むことでもがんのリスクが上がるというのは、ほぼ間違いがないでしょう。なぜがんが問題になるのかといえば、寿命が延びて皆さん長生きするようになったからです。

竹内:高齢になるとがんになる人が増えるので、平均寿命が延びるとがんが問題になってくるというわけですね。

葉石かおり著、浅部伸一監修『名医が教える飲酒の科学』
葉石かおり著、浅部伸一監修『名医が教える飲酒の科学』

浅部氏:はい。例えば、心筋梗塞などの心血管系の病気で亡くなる人は減ってきています。心筋梗塞につながる高血圧やコレステロールなどに効く薬があるからです。長生きする人が増えると、相対的に今度はがんが増えてきます。すると、がんにつながる飲酒などの生活習慣が今度は問題になってくるのです。

葉石氏:同じがんでも、食道がんや喉頭がんなど、お酒の通り道にできるがんのリスクが飲酒でより高くなるのですね。

浅部氏:その通りです。そして、食道がんや喉頭がんは、喫煙の影響も大きいことに注目したいですね。これらは、お酒とタバコのセットでリスクが大きくなるタイプのがんです。以前は、飲み屋でタバコを吸うことも当たり前のようにありましたね。

葉石氏:そうですね。副流煙の問題もありました。最近は分煙でだいぶよくなりましたが。

浅部氏:がんのリスクを考えると、お酒を飲むと顔がすぐ赤くなる体質の人は、アルコールとタバコの両方となるとかなりハイリスクになるので、見直したほうがいいのではという気もしますね。

葉石氏:食道がんについては、アルコール度数の高いウイスキーなどをストレートで飲んだときに、のどがチリチリと熱くなるのがよくないと聞きました。

浅部氏:はい。食道がんについては、アルコール度数の高いお酒や、熱い飲み物、辛くて刺激の強いものなどがリスクになるといわれています。

竹内:ほどほどの飲酒といっても、1日1合程度の量。葉石さん、これは、お酒が好きな方にとっては少ないのでは?

葉石氏:少ないですよ(笑)。浅部さん、休肝日を作れば、飲む日にはもう少し飲んでもいいのですよね?

浅部氏:そうですね。飲む日に2倍、3倍と飲んでしまっては意味がありませんが(笑)。1週間単位で飲酒量を管理して、休肝日を設けた分、飲む日には飲む量を増やすというのは大丈夫かと思います。

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