前回(「お酒は血糖値を上げるのか、それとも下げるのか」)、「食事と一緒にお酒を飲むと血糖値の上昇は抑えられる」という酒飲みにうれしい報告をさせていただいた。今回は、食後血糖値を上げないための具体的な飲み方、おつまみの選び方などを紹介したい。
最新刊『名医が教える飲酒の科学』が好評の酒ジャーナリストの葉石かおりさんが、糖尿病専門医で、緩やかな糖質制限「ロカボ」の提唱者、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんに直撃して話を聞いた。

「食事と一緒にお酒を飲むと血糖値の上昇は抑えられる」――。
前編では最近の研究報告を基に、糖尿病専門医で、緩やかな糖質制限「ロカボ」の提唱者、北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長の山田悟さんから、「アルコールは血糖値にとって、敵ではない」というお墨付きをいただいた。
私もそうだが、これまでは「アルコールは血糖値を上げるの? それとも下げるの? いったいどっち!?」とモヤモヤしていた酒好きもいたと思うが、前編を読んでだいぶホッとしたのではないだろうか。
私事ながら、自分自身が食後高血糖であることが判明したことは、卒倒しそうなほど驚いた(詳しくは前編をご参照ください)。こんな仕事をしているくせに血糖値180mg/dL(食後2時間後の値)ってどうよ…。なお、食後2時間の血糖値が140mg/dL以上の場合、食後高血糖と診断される(食後高血糖の怖さについては前編をご参照ください)。
糖尿病家系で、将来糖尿病のリスクが高い身としては、今後の食事、そしてお酒の飲み方には注意せねばなるまい。念のためお伝えしておくが、これは私だけの問題ではない。山田さんによると、日本人の半分近くは食後高血糖の可能性があるというのだから、人ごとではない! 特に昼食後に眠くなったり、集中力がなくなる人は要注意である。
では、食後高血糖を抑えるためには、どんな飲み方をするのがいいのだろうか。
いくらお酒が血糖値の上昇を抑えるといっても、糖質たっぷりのお酒を飲むとなると、「ホントに大丈夫?」とグラスを持つ手が止まってしまう。特に日本酒は、糖質を多く含むと言われているだけに、手を出すのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうのではないだろうか? 正直、私も食後高血糖が判明してからというもの、日本酒は恋しいものの、あえて糖質ゼロの本格焼酎ばっかり飲んでいる。
また、食後高血糖の恐ろしさを知ってからというもの、おつまみに関しても気になって仕方がない。前編で紹介したオーストラリアの研究(Am J Clin Nutr. 2007;85(6):1545-51.)から、実験で糖質の多いパンをアルコールと一緒に摂取すれば血糖値の上昇が抑えられるという結果が得られているものの、その抑制度合いにはおのずと限界があるだろう。糖質たっぷりの焼きそばやポテサラをガンガン食べたら、さすがにマズイだろう…。
どんなお酒を選べばいいか、そしておつまみは何にすればいいのかーー。ここはしっかり山田さんに確認しておかねばならない。
「糖質の少ないお酒を選ぶ」というのが鉄則だが…
山田さんは、血糖値を上げにくい、緩やかな糖質制限「ロカボ」を推奨していらっしゃいますが、アルコールを絡めた場合、どんな飲み方をすれば実現できるのでしょうか?
「前回もお話ししたように、血糖値を上げるのは糖質です。ですから、糖質面から見たお酒選びの鉄則は、『糖質の少ないお酒を選ぶ』ということになります」と山田さんは話しつつ、次のようにフォローしてくれた。
「しかし、お酒には個人の好みがはっきりあります。極端に糖質が多いお酒は避ける(もしくは量を控える)にしても、苦手(嫌い)なお酒を選ぶことはありません。ぜひ好きなお酒を楽しんでください。ただし、食事(おつまみ)とお酒の糖質量を合計して、40g以内(1食当たり)に抑えるようにしてください。ここがポイントです」と山田さんは話す。

山田さんが提唱している緩やかな糖質制限「ロカボ」では、1食当たりの糖質量を20~40g以内に抑えることを推奨している(1日当たりでは間食10gも含めて70~130g以内に抑える)。これにより、食後高血糖になるリスクを抑えようというものだ。1食トータルで40g以内に抑えるためには、糖質が少ないお酒を選んだほうが有利。その分、おつまみの選択できる幅が広がるというわけだ。
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