アルコールで脳が萎縮する仕組みは分かっていない

 それにしても、なぜアルコールで脳が萎縮しても、認知機能に対しては影響が小さくて済むのだろうか。そもそも、どんな仕組みで酒を飲むと脳が萎縮するのだろう?

 「実は、どのようなメカニズムによってアルコールで脳が萎縮するのかは、まだよく分かっていないのです。ただ、飲酒によって、脳の重要な機能が損なわれるのではなく、脳が全体的に萎縮していくということが分かっています」(柿木氏)

 なんと。仕組みが分かっていないというのは、ちょっと不思議な気もする。

 「酒が直接的に認知症に結び付くわけではないので、安心してください。ちなみに、私も酒が好きですが、私の脳も萎縮していますよ(笑)。大酒飲みは、萎縮している人が多いと思います」(柿木氏)

 安心したのもつかの間、柿木氏は「とはいえ、飲酒でさまざまな病気のリスクが上がらないよう注意しましょう」とクギを刺すのを忘れなかった。

 「飲酒は、動脈硬化や糖尿病などのリスクを上げます。それらがやがて、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症につながる恐れもあります。つまり、アルコールが間接的に認知症の原因になる可能性はあるわけです。ですから、動脈硬化や糖尿病につながるような、ムチャな飲酒はしないことです」(柿木氏)

 アルコールによる脳の萎縮と認知症はイコールではないが、飲み過ぎて糖尿病や動脈硬化になると、そこから認知症につながる恐れがある。そうならないためにも、やはり酒量のコントロールは欠かせないのだ。

 しかし、ついつい飲み過ぎてしまうのが酒飲みの性である。実はこの「酒を欲する気持ち」に、脳は深く関与しているという。次回は、アルコールと脳の「相性の良さ」について、引き続き柿木氏に教えていただこう。

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柿木隆介(かきぎ りゅうすけ)氏
自然科学研究機構生理学研究所・名誉教授
柿木隆介(かきぎ りゅうすけ)氏 1953年生まれ、福岡県福岡市出身。臨床脳研究の第一人者。自然科学研究機構生理学研究所・名誉教授。
日本神経学会専門医。九州大学医学部卒業後、神経難病の解明を目指し神経内科医となる。その後、より深い次元で人間の脳機能を研究するためロンドン大学医学部神経研究所などを経て、1993年より岡崎国立共同研究機構生理学研究所(現、自然科学研究機構)教授。
著書に『脳にいいこと 悪いこと大全』(文響社)、『記憶力の脳科学』(大和書房)、『読むだけでさみしい心が落ち着く本』(日本実業出版社)など多数。

[日経Gooday(グッデイ)2022年5月12日掲載]情報は掲載時点のものです。

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