そこで、最新刊『名医が教える飲酒の科学』が好評の酒ジャーナリストの葉石かおりさんが、臨床脳研究の第一人者で、自然科学研究機構生理学研究所名誉教授の柿木隆介氏に、アルコールと脳の関係について詳しく聞きました。

「あれ、昨日の飲み会でお金払ったっけ?」
飲み過ぎて記憶がなくなった翌日、そんなふうに心配になる酒飲みは多い。「まん延防止等重点措置」が明け、久しぶりに会った方と深酒をした翌朝は、案の定こんな感じでスタートした。
リビングから玄関へ、点々と置き去りにしたアクセサリーや時計などを拾いながら、玄関を見てハッとした。昨日、履いていた靴がないのだ。

そして、ドアを開けてみると、そこにはなぜか脱いできれいにそろえられた靴が置いてあった。
久々のやらかしに自分でも大爆笑。しかし、その一方で、「靴を玄関の外に置き去りにしたことを覚えていないなんて、長年の飲酒で脳が萎縮してしまっているのではないか」と不安になった。
この連載でも過去に紹介したように、多量の飲酒を長年続けていると、脳が萎縮してしまうという話だった(参考記事「酒は毒? 薬? アルコールの影響で『脳』はこう変わる」)。
しかも、最近になって、それほど量は多くなくとも、つまり「ほどほど」の飲酒でも、習慣的に続けると脳は萎縮する可能性があるという研究結果(*1)が発表された(参考記事「少量でも習慣的な飲酒は脳に影響か」)。
もしそれが本当なら、やはり私の脳も飲酒の影響で何らかのダメージを受けているのかもしれない……。
これはもう、脳の専門家に確かめるしかない。臨床脳研究の第一人者であり、自然科学研究機構生理学研究所の名誉教授で、『脳にいいこと 悪いこと大全』(文響社)などの著書がある医学博士の柿木隆介氏にお話を伺った。
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