体にとっては自分を守るための防御反応なのかもしれない。しかし、人間にとってはQOL(生活の質)も下がってしまう、迷惑な症状でしかない。特に花粉症持ちの酒飲みにとっては。

 酒好きも痛めつける、この厄介な花粉症。対処法を伺う前に、敵のことをもう少し知っておきたい。「現代病」とも言える花粉症だが、患者は増えているのだろうか?

 「はい、残念ながら花粉症の方は増えています。例えば、スギ花粉症は2008年には人口当たり26.5%だったのが、2019年には38.8%と、10%以上増加しています(*1)。その背景には、戦後に各地に植えた杉が育ち、花粉の飛散量が増えたことがあります。また、かぜなどの軽い感染症に対し、早々に抗菌薬を使ってしまうことも影響していると考えられます」(大久保さん)

 抗菌薬は細菌による感染症を防ぐ薬で、かぜの原因となるウイルスには効かない。にもかかわらず、「細菌による二次感染の予防」などの名目で安易に抗菌薬が使われてきたために、体内の細菌叢(そう)が乱れて免疫機構のバランスが崩れ、花粉をはじめとする「自然のもの」に対して防御反応を示すようになったと考えられているという。

 「さまざまな抗菌グッズが使われるようになった『クリーン過ぎる環境』もまた、花粉症患者の増加につながっているのではないかとも言われています」(大久保さん)

 良かれと思って使っている抗菌グッズが、間接的に花粉症の原因になっていたとは考えもしなかった。

*1 日耳鼻. 2020;123(6):485-490.

アルコールが毛細血管を拡張し、粘膜を過敏にする

 さて、花粉症の正体が大まかに分かったところで、本題である「花粉症とアルコールの関係性」について、大久保さんに伺っていこう。

 「花粉症の方がお酒を飲むと、症状は間違いなく悪化します。お酒を飲むと、アルコールによって、体の毛細血管が拡張するからです。このとき、鼻の粘膜が腫れ、一層敏感になり、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった花粉症の症状がひどくなります。また、アルコール代謝の過程で生成されるアセトアルデヒドによってアレルギー症状を引き起こす『ヒスタミン』の放出が促されることで症状が悪化するとも考えられています」(大久保さん)

 ああ、やっぱり。実感通り、花粉症とアルコールの相性は良くなかったのか(涙)。症状を悪化させたくなければ、酒を飲むのをやめるしか策はないのだろうか。

花粉症の人が帰宅して酔ったまますぐ寝てしまうと、花粉症の症状が悪化してしまうことがある(写真はイメージ=PIXTA)
花粉症の人が帰宅して酔ったまますぐ寝てしまうと、花粉症の症状が悪化してしまうことがある(写真はイメージ=PIXTA)

 「そんなことはありません。基本的な対策としては、酔っぱらった状態で眠らないこと。つまり、お酒がさめた状態になってから眠るようにしましょう。そのためには、二日酔いになるまで深酒をしないことが大前提になります。たしなむ程度に飲めば、翌日、花粉症の症状がひどくなるのを避けられます」(大久保さん)

 酔っぱらったまま寝ると、毛細血管が拡張し、粘膜が腫れたまま眠ってしまうことになる。すると、翌朝まで花粉症の症状が悪化した状態が続いてしまうのだという。また、二日酔いになると、それが収まるまでは花粉症の症状もひどくなりやすいと考えられる。

次ページ 眠くなる花粉症の薬が悪酔いを誘発