適切な水分摂取が、老化や病気の予防に役立つ――。そんな可能性を示す研究結果が米国で報告されました(*1)。

「老化の加速に水分摂取量が関係する」仮説を検証
実年齢は同じでも、身体的(生物学的)には実年齢より若い人と、老化が進んでいる人がいます。老化を加速させる原因にはどんなものがあるのでしょうか。今回、米国立衛生研究所(NIH)心肺血液研究所の研究者らが着目したのが、水分摂取量です。
これまでに、マウスによる実験では、生涯を通じて水分摂取制限を行うと、寿命が短縮し、複数臓器の変性が促進されることが示されていました。一方、人間では、1日あたりの水分摂取量の個体差が大きいこと、世界的には、推奨される量を摂取していない人が多いことが知られています。そうした情報に基づいて、研究者たちは、「水分摂取量を最適化すると加齢の進行が遅れる」という仮説を立て、これを検証することにしました。
分析の対象としたのは、米国で行われた観察研究「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)」に参加した45~66歳の男女1万5752人です。これらの参加者は、1987~1989年に研究に参加し、25年超にわたって追跡されていました。
水分摂取習慣の指標には、血清ナトリウム値を用いました。一般に、水分摂取量が多いほど血清ナトリウム値は低くなります。水分摂取量が多すぎると低ナトリウム血症となり、少なすぎると高ナトリウム血症を引き起こします。米国では、血清ナトリウム値の正常値は135~146mmol/Lとされています。
参加者の研究参加時点(Visit 1)と3年後(Visit 2)の受診時の血清ナトリウム値の平均を「中年期の血清ナトリウム値」としました。今回の分析対象は、中年期の血清ナトリウム値が正常値の範囲内にあった人とし、血清ナトリウム値に影響を及ぼす可能性のある要因(血糖値140mg/dL超、BMI〔体格指数〕35超の肥満など)のある人たちを除外して、計1万1255人の情報を収集しました。
生物学的年齢の計算には、Visit 2時点の収縮期血圧(上の血圧)、総コレステロール値など15のバイオマーカーが必要であるため、それらに影響する降圧薬(血圧を下げる薬)や脂質降下薬(コレステロール値を下げる薬)を使用していた人を除外し、必要な情報がそろっていた6956人を生物学的年齢に関する分析の対象としました。
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