さまざまな腸内細菌を働かせるためにバランスの良い食事を
――國澤センター長「ただ、花粉症対策としてヨーグルトばかり食べていても、意味がないですよ」
「ヨーグルトを食べ続けていて、花粉症がやわらいだ気がする」という声も聞いたことがあるのだが…。
――國澤センター長「もちろん、乳酸菌によって免疫バランスが整うことはありますが、いくら自分にあったヨーグルトを食べ続けていても、偏った食事ではその効果を十分に発揮することはできません。特に、菌は単独ではなく分業制。菌によって役割が違いますので、さまざまな種類の腸内細菌が必要です。菌の種類によって好みの食べ物も変わりますので、バランスの良い食事が大切なのです。また、『免疫』にとっては『栄養の欠乏』が分かりやすいリスク。例えばビタミンB1という1種類の栄養素が不足するだけで、免疫細胞の量がガクッと減り、ワクチンの効果も減るという動物実験データもあります」

いくら整腸作用があるからといって、ヨーグルトばかり食べていては意味がないようだ。
――國澤センター長「乳酸菌ひとつとっても、ヨーグルトだけではなく味噌汁や漬物などにも含まれます。その他にも納豆菌など発酵食品に使われる菌に、さまざまな特徴があることが分かってきていて、今後さらなる機能の解明が期待されています。私たちの最近の研究でも、乳酸菌や納豆菌が青魚やアマニ油・エゴマ油などに含まれる『オメガ3脂肪酸』を使ってアレルギーを抑制する物質を作ることを発見しています。これまでは、『腸内細菌だけ』もしくは『食品だけ』を気にしていた方がほとんどだと思いますが、これからは『腸内細菌と食品の組み合わせ』を意識することが重要になりそうです」
「花粉症には〇〇を食べると良い」とちまたではよく言われるが、腸内細菌の働き方は十人十色。同じものを食べても、全員が同じ効果が出てくるというわけではないのだという。自分の腸に合ったものを見つけたら、まずは偏った食べ方を避けて、バランスの良い食事と共に続けることが花粉症対策の近道と言えそうだ。
腸の健康を見直すことは、花粉症などのアレルギー症状の改善だけではなく、さまざまな疾患予防につながることもわかってきた。現代人がおちいりがちな落とし穴もある。詳細はまた次回。
<正しい花粉症対策のルール>
ルール 1
すべての人にヨーグルトが良いとは限らない。自分に合った乳酸菌を見つけるべし
ルール 2
便は自分に合う乳酸菌かどうかを見極める道しるべ。調子が良さそうなら、2~3週間は続けてチェックすべし
ルール 3
菌は分業制で働くので、腸の機能を高めるにはさまざまな種類の腸内細菌が必要。バランスの良い食事を心がけるべし
(図版制作:増田真一)
医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長

エッセイスト・フリーアナウンサー

[日経Gooday(グッデイ)2022年3月14日掲載]情報は掲載時点のものです。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「日経Gooday」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

日経Gooday(グッデイ)は、健康・医療の最新情報をお届けする総合サイトです。有料会員になると、専門家に徹底取材した運動・筋トレ、食事、病気予防などの特集・連載記事に加えて、「専門家への24時間電話相談」「名医紹介サービス」「健診結果のAI予測」などをご利用いただけます。詳しい情報はこちらから
Powered by リゾーム?