春の足音が近づいてくると、「新生活」「桜」に加えて気になるのは「花粉症」ではないだろうか。終始鼻や目に不快感をもたらす花粉症がこの時期のストレスになっている向きも少なくないだろう。かくゆう私・健康ジャーナリスト結城未来も、春の足音が近づくにつれて鼻がムズムズしてティッシュが手放せない。集中力も格段に落ちて仕事の効率も悪い。

 そういえば、花粉症対策としてここ数年「花粉症にはヨーグルトが良い」という情報がまことしやかにささやかれている。しかし、果たして普段食べている食べ物で、この辛い花粉症から解放されるのだろうか? 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長に、この情報が出てきた理由と「花粉症対策」にどう生かすかについて解説していただこう。

写真はイメージ=123RF
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――國澤センター長「『花粉症対策にヨーグルト』というのは、ある意味合っているとも間違っているとも言えます」

 いきなりナゾめいた返答だ。『ヨーグルトが良い』と信じて、ひたすら食べている人も少なくないだろう。

――國澤センター長「そもそも花粉症は、免疫のバランスが乱れ、花粉に対して異常に反応してしまうことで起こります。『花粉症対策にヨーグルト』と言われ出したきっかけは、『免疫バランスの偏りを乳酸菌が改善できる』という研究結果から言われるようになったのだと思います」

 「免疫」は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を攻撃して自分の身を守る「防御システム」だ。この防御システムが異常をきたすことでさまざまな疾患を引き起こすようだ。

――國澤センター長「体の中では、常に免疫細胞がパトロールをして有害物の排除に働いています。実はこの免疫細胞の半分以上が腸に存在しています。いわば、腸は『体内における最大の免疫臓器』なのです」

 体のパトロール隊が腸に集中するのはどうしてだろうか?

――國澤センター長「腸が体外と最もたくさんのやりとりをする器官だからです。もちろん、体の皮膚表面や呼吸器も外とつながっていますが、特に腸などの消化器には飲食を介してさまざまな物が入ってきます。そのため、ウイルスや細菌などの悪いものが侵入してくるリスクも高く、それらを防ぐために、パトロール隊である免疫細胞が特に警戒している場所なのだと考えられます。また、腸で吸収される栄養素や食品成分は、免疫のコントロールにも関わっています」

 腸は常に外敵の脅威にさらされているからこそ、免疫細胞が集中しているようだ。

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